第139章



 結衣香が生徒会長になってから、はじめて受ける「生徒手帳検査」が始まった。


 結衣香は、まるで射殺さんばかりの眼光で数拍の間男子生徒をにらみつけたが、ゆっくりと目を伏せ、そして両手をスカーフへと伸ばしていった。
 ――シュル―― という音とともにセーラーカラーからスカーフが滑り抜かれる。
 そして、セーラー服の裾から両腕を抜いて、ゆっくりと上半身の砦を拭い去る。
 男子生徒たちの目の前に、形よく膨らみを帯びた稜線が晒された。
 露になった双丘は、柔らかく震えながらも張りを持って頂上をツンと上向きにそらせている。
 その頂には、桜色に色づいた朱豆が浮かんでいた。
 結衣香は、晒される自らの胸元を隠すことなく、両手を左右に下している。
 この「生徒手帳確認」の最中は、たとえわずかでも身体を隠す素振りを見せれば、即座に厳罰が処されるのである。
 「生徒会長特権」を停止されている結衣香が、それを逃れる術はない。
 たとえ普段どれだけの権力を持ち、そしてつい先日はその権力でもって排除した男子生徒の後輩たちが相手であっても、「生徒会長特権」を剥奪されている今、このときだけは、決して彼らに逆らう ことは許されないのだった。

「フフッ……結衣香先輩のオッパイ、久しぶりに見ましたよ。
 いつ見ても、きれいなオッパイですね。
 乳首なんか、甘くて美味しそうだ」

 男子生徒の好色なセリフに、軽蔑のまなざしを隠そうともせず、睨み返す結衣香。

「さぁ、次はスカートだ。
 早く素っ裸になってすべてを見せてください」

「……わかっているわ……」

 淡々としたセリフを返し、結衣香はスカートに手をかけた。
 そしてわずかに指先が動いたかと思うと、スカートはスルリと結衣香の腰から足元へと落ちていった。
 下着を身に着けることが許されない聖女学園の女子生徒にとって、スカートを脱ぐということは、乙女の秘められし聖域を露にするということを意味する。
 お臍からなだらかな曲線でつながる白丘を抜けたその下に、淡い繊毛に彩られた結衣香のひとスジの姫割れが刻まれている。
 そんな神秘的なクレヴァスが、男子生徒たちの目に晒されたのだった。

「ホォ〜、さすがは生徒会長様のワレメちゃん!
 生意気そうでかわいらしいですねぇ。
 柔らかそうな亀裂が、今にも開きそうだ」

「…………」

 男子生徒の少女を辱め、貶める言葉を無視するように唇を噛み締め、わずかに視線を逸らした結衣香は、両手を握り締めながらも身体の横に下ろし、女体のす べてを男子生徒たちに晒したのだった。
 生徒会長になってからは、その「特権」を駆使しして、この「生徒手帳確認」はすべて退けてきた。
 男子生徒たちも、「生徒会長特権」の後ろ盾がある結衣香を避けるようにもなっていた。
 しかし、今、その特権すらも封じられて、まさにいち女子生徒としての辱めを受ける身となっているのだった。
 普段、権力と腕力で虐げている男子生徒が相手とあって、結衣香の心中は恥じらいと屈辱に燃え上がっていた。
 しかし、この全裸公開はまだまだ「生徒手帳確認」の序の口に過ぎないことは、男子生徒も結衣香自身もよく知っているのだった。

「さて、それじゃあ、まずは本人確認からはじめようか。
 さぁ、結衣香先輩、その素っ裸の身体をよく見せてちょうだいね。
 ……そうだなぁ、結衣香先輩は強いから、安心して調べられるように、両手は頭の後ろで組んでおいてくださいよ。
 あと、両脚は肩幅に広げて。
 でないと、股の辺りがよく見えないですからね♪」

「……くっ……貴様ら……」

 結衣香は、小さくうめいたが、男子生徒たちの命じるままの姿勢をとった。
 この「生徒手帳検査」においては、女子生徒はその検査に「協力」しなければならないことが定められている。
 それは、すなわち検査をする男子生徒の命じるままのポーズを取らなければならないことを意味するのである。
 結衣香は、両手を頭の後ろで組み、両脚を肩幅に広げる。
 それは、あまりにも無防備な姿だった。

 「それじゃあ、まずはオッパイからね。
 どれどれ……」

 そう言うと、男子生徒は結衣香の柔らかい膨らみに手を当て、そしてお餅でも持つかのように揉み上げた。

「うわっ、柔らかっ!
 さすがは結衣香先輩、こんなに柔らかいオッパイ持ってるんですね。
 写真じゃこの柔らかさはわからないな」

「……だったら本人確認の意味はないだろう……さっさと放したらどう?」

「そんなことないよ、こうやって持てば、結衣香先輩の乳首をよく観察できるでしょ。
 この写真とおんなじ乳首かどうか、じっくり確認してあげますからね」

「それじゃあ、僕はお尻の確認をしてあげますよ」

 もうひとりの男子生徒が、結衣香の後ろに回り込んでしゃがむと、両手で結衣香の尻たぶを鷲掴みにし、グニグニと揉み出した。

「こっちのお尻も柔らかいぞ。
 まるでお餅みたいだ。
 このお尻揉むの、久しぶりだなぁ〜」

「よし、じゃあ俺は結衣香先輩の一番女の子っぽいところを調べてあげるよ。
 きれいなお毛毛ですね〜、うちのクラスの真由美ちゃんなんか、気が強いくせにツルッツルなんですよ。
 でも、希ちゃんよりは薄いかな?
 そして、この割れ目の肉は……へへッ、プニプニしてますね!
 割れ目に指を入れたら、グニって埋まり込んじゃう」

「……んっ……」

 女の子にとって最も恥ずかしい割れ目を至近で見られるだけではなく、細かく実況されながら、まるでおもちゃのように弄り回される。

「あ……あなたたち……これが本人確認のための『個人認証』?
 確認は目視でするのが決まりでしょう!」

 結衣香は、身体じゅうの恥ずかしい部分を好き勝手に弄り回している男子生徒たちに向かって、抗議の声を上げる。
 生徒手帳の内容確認における「個人認証」は、あくまでも写真と同一人物かどうかを確認するということが、建前上の目的とされている。
 したがって、写真と比べるために、目で見て確認するというのが、普通のやり方である。
 かつて、生徒会長になる前に受けた「生徒手帳検査」でも、「個人認証」はいやらしい視線ながらも、目視で行われてきた。
 今のような、恥部を触診するような行為は、明らかに逸脱行為と言えた。
 今、結衣香が男子生徒たちの「生徒手帳検査」を甘んじて受けているのは、校則の特例事項に従った結果である。
 もし、男子生徒が決まりを破るというのであれば、結衣香自身にも決まりを守る理由はなくなる。
 後々、面倒なことになるかもしれないが、この場は実力で逃れる考えが、頭をよぎった。
 合気道を修めている結衣香にとって、後輩の男子生徒3人など、わずか数秒で片をつけることができるほどの相手でしかない。
 結衣香の身体に臨戦態勢の準備が整っていく。
 しかし、男子生徒はそんな結衣香の考えを先回りするかのように、1枚の紙片を結衣香の眼前に示した。
 そこには、このように書かれていた。

「男子生徒からの要望に従い、『生徒手帳検査強化週間』を定める。
 具体的方法については、検査員である男子生徒に一任する。
 検査は目視のみに頼ることなく、積極的な触診により詳細な確認を実施することを推奨する。
 なお、その際検査対象となった女子生徒は、検査員の指示に従い、要求される姿勢を速やかに取り、要求される行為を速やかに実施する義務を負う」

 以上のような内容の文章が、きょう付けで学園長の印とともに記載されていた。
 つまり、いつの間にか「生徒手帳検査強化週間」なるものが制定され、本日付で施行されていたのである。
 生徒会長である結衣香にも知らされていない。
 当然、学園中の女子生徒の誰一人知らない事実であろう。
 しかも、施行の日程、結衣香を罠にはめた手口、タイミングから考えて、彼女を辱めるために男子生徒が要望し、実施に踏み切られたものであることは、疑いようもない。
 今、結衣香が辱められているのは、用意周到に準備された結果だったのである。
 一連の事実の裏事情がわかった結衣香ではあったが、校則に定められた「生徒手帳検査」を受け、学園長名で発布された「生徒手帳検査強化週間」なる特別 ルールが施行されている以上、この男子生徒の暴走のような陵辱も、この聖女学園においては正式な効力を持った男子生徒の正当な権利と位置づけられる。
 したがって、結衣香は、どんな理不尽を感じようとも、両手を頭の後ろから下ろすことはできないのだった。


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