希が反省室から戻ってきた翌日の土曜日、由紀と希は3日ぶりに一緒に登校した。
希には、一緒に歩く由紀の姿が、少し違って見えていたが、それが気のせいなのかどうかはよくわからなかった。
しかし、転校してからわずか数日の由紀も、この学園の生徒として生活することを、意識しているのかもしれない。
由紀たちが学校に着くと、既にクラスメイトの女子生徒たちは、学校に来ていた。
そして、由紀に続いて希が教室に入ってきたところで、クラスの男子生徒たちの視線が、希に集中する。
何しろ、きのうまでの3日間、希は恥ずかしいところを一切隠すことのできない特別制服での生活を強いられていたのである。
その男子たちの視線は、普段から身に付けているシースルーのセーラー服など突き抜けるかのように、そして本来透けるはずのないスカートの中までも見通すかのように、網膜の中に焼きついた希の恥部を、その姿に重ね合わせるのだった。
一瞬、由紀がおびえたかのような視線で希をうかがう。
しかし、希は、そんな由紀を元気付けるかのように、いやらしい視線を向ける男子たちを無視して、由紀の手を取ってクラスメイトの女子たちが集まっている教室の奥へと歩いていった。
この日、希の態度は、反省室に入る前とは少し違っていた。
今はもう希の反省期間は終了し、通常の(聖女学園での)生活に戻っているため、男子たちの言うことを完全に無条件で、何から何まで聞かなくてはならないという制約は本来なくなっている。
そんな希に対して、男子生徒たちは、きのうまでとは多少異なりながらも、イタズラを仕掛けてくる。
休み時間、先生に言われて黒板を消しているとき、後ろから男子生徒が3人で希のスカートを思いっきりめくり上げた。
「いやっ!!」
希は、すかさずスカートを押さえようとするが、3人がかりでスカートを持ち上げられているために、スカートを元に戻すことができないでいた。
普段であれば、そんな男子たちの手など振り切って強引にかわしつつも、反撃を返す希だったが、きょうの希は、一生懸命スカートを押さえようとするだけで、それ以上の抵抗も反撃もしようとはしなかった。
そのため、男子生徒たちにスカートをめくられている間、ずっと希のお尻はクラスじゅうの生徒たちに見られつづけていた。
これは、反省室から出てきた直後の女子生徒には、よく見られる様子である。
もう2度とあの反省室に入りたくはない・・・、あの恥ずかしい日々を繰り返したくない・・・。
そういう思いが、少女たちの心に棲みつき、これまでのような積極的な抵抗がしにくくなるのである。
もっとも、そういう心理状態も一時的なもので、数日もすれば希もまた元の活発な性格に戻ることになるのだが、反省室から出てきた女子生徒は、少しの間、おとなしくなるのだった。
そうして、希が少しおとなしくなったことを除けば、いつもどおりの生活に戻っていた。
土曜日は、授業が午前中で終わり、給食と掃除はなく、そのまま放課後となる。
午前の最後の授業が終わり、ホームルームになった。
ちょうど、最後の授業が数学で玲子が授業としていたため、そのままホームルームに流れた。
「それでは、今週の授業はこれで終わりです」
そう言って、わずかな連絡事項などを告げ、来週の話を少しした後、
「それから、きょうは土曜日ですから、女子は制服をクリーニングセンターに提出して、帰宅してください」
と締めくくって、ホームルームを終えたのだった。
由紀は、聞きなれない言葉に首をかしげて、隣の希に聞いてみた。
「ねぇ、希ちゃん。
クリーニングセンターってなに?」
希は、ちょっと表情をうつむかせた後、諦めた様子で由紀の方に向き直りながら口を開いた。
「クリーニングセンターっていうのはね、わたしたちの制服とかを洗濯する場所なの」
「へー、それじゃあ、自分たちで洗う必要とかはないんだ。
便利だね」
「・・・うん、便利・・・なんだけどね・・・・・・」
「・・・けど?」
「うん・・・あたしたち女子は、土曜日の放課後に制服と、あと体操着を全部クリーニングセンターに出さないといけないの。
全部・・・・・・ね」
「えっ? ぜんぶ? これも?」
そう言って由紀は、今自分が着ているセーラー服を、ちょこんとつまんだ。
「・・・そう」
「え・・・っと・・・それじゃあ、私たちは帰るときは何を着て・・・帰るの?」
まだ、由紀には完全な形でこの後のことを予想できていなかった。
そんな由紀に、希が答えた。
「・・・・・・な、何も・・・着られないの」
「えっ・・・・・・な、なに・・・も?」
「そう、何も着ないで帰らなくちゃいけないの。
クリーニングセンターに、制服を提出した後・・・寮に帰るまで・・・」
「そ、そんなっ!!
だ、だって学校だけじゃなく、外だって歩かなきゃならないんだよ!
なのに・・・・・・」
由紀は、それ以上言葉を続けることができなかった。
想像もしていない事実、そして予想もできなかった規則・・・それが聖女学園の姿なのだった。
いまだ大きな不安を抱えている由紀を含む5人の少女たちは、三角棒を渡って校舎の端の方にあるクリーニングセンターへと向かった。
何とか、全員無事に渡り終えてクリーニングセンターの前まで到着すると、カウンターの中に女の人がひとり立っていた。
「いらっしゃい。
それじゃあ、制服と体操服をこちらに提出してくださいね」
にこやかにそう言ったお姉さんは、カウンターの上に5つのかごを並べた。
それぞれのかごに、名前がついている。
まずはじめに、5人の少女たちは、持ってきた体操服をそのかごの中に入れた。
今週使った紺色の体操服と、今週は使っていない赤色の体操服の両方ともである。
これは、規則で決められており、たとえ使おうが使うまいが、両方の体操服をクリーニングセンターに提出しなければならないことになっているのである。
そして、全員が体操服をかごに入れ終わると、
「それじゃあ、次は制服を入れてね」
と、クリーニングセンターのお姉さんが、にこやかに促した。
その言葉に、希たちはしぶしぶながらも制服を脱ぎ始める。
しかし、その頃には周りにたくさんの男子生徒が集まりだしていた。
それも当然のことである。
なにしろ、今からここで、女子生徒全員のストリップショー&オールヌードが見られるのだから。
「の・・・希ちゃん・・・・・・どうすれば・・・」
由紀はおびえたように希に問い掛けたが、問われた希としても、対策があるわけではなかった。
「由紀ちゃん・・・どうしようもないの。
こればっかりは・・・どうしようも・・・・・・・・・・・・。
こうなったら、できるだけ手早く済ませて、早く帰るしかないわ」
希はそう言って、セーラー服のスカーフを外した。
そのスカーフをかごの中に入れると、ちょっと周りをうかがって躊躇するそぶりを見せたが、すぐに意を決したような表情で、片手で胸元を押さえながら、器用にセーラー服を脱ぎ出したのだった。
そうして、胸を隠しながらセーラー服を脱いでかごの中に入れた希は、次にスカートへと手をかける。
スカートのホックを外すと、スカートは重力に引かれて希の足元へと滑り落ち、そして何にも隠されることのなくなった下腹部を、すかさず空いている方の手で隠したのだった。
しかし、当然腕は2本しかないため胸と股間を隠したところで打ち止めとなり、お尻は剥き出しである。
靴下と靴だけのほとんどオールヌードになった希は、周りの男子にはやし立てられるが、ただ俯くだけで、その声を受け止めていた。
たとえ、きのうまで恥ずかしい姿を晒していた希であっても、改めて自ら服を脱いで恥じらいの素肌を晒していくことに、羞恥を隠すことはできない。
それが、乙女たちの救われない性だった・・・・・・。
そして、そのころには、希だけではなく、ほかの少女たちも同じように制服を脱ぎ始めていた。
真由美、綾、瑞穂が、それぞれセーラー服を脱ぎ、そしてスカートさえも脱いでいく。
そして、その脱ぎ終わった制服をクリーニング用のかごへと入れていったのだが、胸と股間を隠したままでは両手がふさがり、制服を持つことはできない。
結局、少しでも身体を隠そうという努力とは裏腹に、周りの男子に、胸や秘部を何度も見られてしまったのだった。
最後に残った由紀も、周りの少女たちに合わせて制服を脱いでいく。
もはや、抵抗することが不可能なことは知っている。
どんなに恥ずかしいことであっても、この学園で生活していく以上、全て甘んじて受け止めなければならないのである。
先日の希の反省室入りを目の当たりにした由紀は、その自分では決して耐えられないであろう恥辱の数々を、文句ひとつ言えずに受け入れなければならなかった希の姿に大きなショックを受けたのだった。
由紀は、その小さな決意を心に思い返し、セーラー服を脱ぎ、そしてスカートを取り去ったのだった。
両手で頑張って恥ずかしい部分を必死に隠しているし、頬はこれ以上ないほどに真っ赤に染まっている。
それでも、由紀は、精一杯の勇気を振り絞って、学校の廊下の真ん中で全裸になるという破廉恥極まりない羞恥に耐えていたのだった。
そんな少女の小さな決意など顧みることも泣く、男子生徒たちは、初めて間近で目にする由紀のオールヌード姿に嬉々として歓声を上げ、由紀をそして少女たちを恥ずかしがらせるような言葉を投げかけて、羞恥心を煽るのだった。
「はい、みんなごくろうさま。
この制服と体操服は月曜日に返却しますからね。
月曜日の朝、始業前にその格好でもう一度こちらまで受け取りに来てください」
クリーニングの受付けのお姉さんが、にこやかにそう告げた。
「えっ! そんなっ!」
4人の少女が黙って頷いたときに、声を上げたのは由紀だった。
小さな決意の効力は、制服を脱ぐところで尽きてしまったようである。
今、決死の覚悟で服を脱ぎ去ったのに、この格好でもう一度ここに来なければならないということを聞いて、ショックを隠し切れなかった。
「由紀ちゃん・・・そういうことなの・・・。
恥ずかしいけど、我慢するしかないのよ」
希は、自分の身体を両手で庇いながらも、由紀にささやきかけた。
由紀は、ただ小さく頷くことしかできなかった。