寮を出た希は、再び学校へと向かう。
久しぶりの、ひとりでの外出である。
これまでは、両手を使えないことを理由に、常に男子生徒たちに付き添われていた。
あらゆる口答えもできない状態で、なすがままにされたその羞恥と屈辱の記憶である。
今、ようやく自由の身を手に入れた希は、3日前に反省室入りを言い渡した玲子に会うために、職員室へと向かっていった。
放課後ということもあり、校内にいる生徒はまばらである。
そんな中、希は職員室の戸を開けた。
もちろん、ここに至るまでの過程では、廊下の三角棒にまたがり、恥ずかしい思いをさせられたが、この3日間、男子生徒の手によって、無理矢理なペースで進まされた経験から比べれば、久しぶりに自力で進む安心感から若干の余裕はあった。
そうしてたどり着いた職員室で、希は、玲子の前に立ち止まる。
「佐藤さん、2日間の反省期間と1日の追加延長で、合計3日間の反省でしたね。
よく反省できましたか?」
「・・・・・・・・・・・・」
希が、返事をできないでいると、
「まだ、反省が足りないのかしら?」
玲子が、目を細めて問い詰めた。
そこで、希は慌てて口を開いた。
「い、いえ・・・・・・、あ、はい・・・十分に反省できまし・・・た」
希の歯切れの悪い答えに玲子はため息をつく。
「・・・・・・まあ、いいわ。
でも、本当にきちんと反省できていたのかしら?
今回は、当初の2日間の反省期間に加えて、1日の期間延長と2回の特別指導による追加懲罰でしたね。
まず、初日の授業態度が悪かったことと、提出したノートの内容の不備が原因で1回目の特別指導。
授業中に5回も6回も気をやるなんて、とても授業に集中していたとは言えないわね・・・・・・。
もう少し、慎み深くはできなかったのかしら?」
希も、別に好き好んで授業中に絶頂を迎えたりはしない。
男子生徒に、バイブを操作されて無理矢理に性感を高められ、辱められたのである。
しかし、それすらも反省中の罰則のひとつである以上、文句を言うことは許されないのだった。
うつむく希を見ながら、玲子は続けた。
「まあ、このぐらいは大目に見ましょう。
次に、2日目・・・木曜日の放課後、校内巡回のときに、男子生徒がクリトリスマッサージをしてあげながら、あなたに浣腸をしようとしたところ、あなたはその浣腸の注入に抵抗した挙句に、言いつけに逆らって脚を暴れさせて男子生徒のあごを蹴った。
それで、反省期間の1日延長になったわね。
これでも、あなたは本当に反省する気があったと言えるのかしら?
あと、たった数時間で反省期間が終わろうとしているのに、本当に馬鹿なことをしたものね。
いくら、目隠しをされた状態で、後ろからいきなり浣腸器を突き刺されたからって取り乱して・・・・・・、その程度のことは予測して当然のことでしょ。
お尻を丸出しにした反省中の女の子が廊下を歩いているのよ。
健全な男子生徒なら、浣腸のひとつもしたくなって当たり前だわ。
反省者としての自覚が足りないと言わざるを得ないわね。
予定では、その日で反省期間が終わるはずだったのでしょう。
男子生徒だって、多少は強引なこともしたくなるというものだわ。
結局その後、5人がかりで廊下に組み伏せられて、うつ伏せで大きく脚を広げられた格好で浣腸されたのではなくて?
まったく・・・そのときの無駄な抵抗に、一体何の意味があったのかしら。
どうせ浣腸されるのだから、素直にされていればよかったのにね・・・。
そして校内巡回の後、反省室に戻ってから、トイレ使用時間になるまで我慢できなくて、トイレ使用不可の時間に反省室の床に排便したことで、2回目の特別指導だったわね。
これでは・・・・・・、とても十分に反省できた・・・・・・と言えるような内容ではないわね」
玲子は、そう言って、手元の書類を手に取って言葉を続けた。
「えーっと、1回目の授業態度に関する特別指導では、ローター挿入状態でのグラウンド5周だったわね。
気をやった回数だけ周回数を増やすと言ったのに、ランニング中に2回絶頂を迎えて、計7周走ったのよね・・・。
本当に、反省中の特別指導だという自覚があったの?
そして2回目の反省室での時間外排泄に関する特別指導は、翌朝の花壇への放尿水撒きだったかしら?
あれは、もう少し全体に満遍なく撒くべきでしたね。
少々軽い処分のような気もしますが、割りと男子生徒の評判がよかったので、よしとします」
玲子は、一度書類から顔を上げて希の方を見た。
希は、思い出したくもない仕打ちの数々に、玲子の目を見ることができずに顔をそらしている。
そのとき、ふと玲子が何かに気が付いたような目をした。
「あら、よく見たら、2日目の木曜日は、あなた掃除当番だったのね。
ときどきタイミングが合うことがあるのよね。
フフフ・・・、反省期間中の掃除当番、さぞかし『ごたいへん』だったのではなくて?
この報告書は目を通すのを忘れていたわ」
玲子は、冷たい笑みを浮かべながら、手元の資料に改めて目を向ける。
「ふーん、掃除のときに着るメイド服は、サポートをしてくれた男子生徒に着替えさせてもらったのね。
まあ、あの服はワンピースタイプだから、手を後ろにしたままでも何とか着られるものね。
あら、でもエプロンは全部外されていたの?
確かに、反省中のあなたが、身体を隠していたら、反省になりませんからね。
これは『適切な処置』と言えるわね」
そう言って資料をめくる玲子の手から、何かが床に舞い落ちた。
それを拾い上げる玲子。
「あら、この報告書、掃除当番のときの写真が同封されていたのね」
玲子が拾い上げたそれは、一枚の写真だった。
そこには、掃除当番で女子生徒が着用するメイド服を身に着けた希の姿があった。
その写真を希にも見せながら、玲子は言葉を続けた。
「そうね、エプロンを外したら当然、こうなるわよね。
胸もアソコも剥き出しで、反省者にふさわしい格好だわ。
これならしっかりと反省にも身が入ったでしょう・・・・・・と言いたいところだけれど・・・・・・」
目の前にちらつかされる恥ずかしい写真に、希は視線を反らしながら、玲子の言葉を聞くことしかできなかった。
「希さん・・・、この『掃除時間1時間45分』というのはどういうことなのかしら?
少々、かかりすぎなのではなくて?
確かに、両手が使えなくて掃除がしにくかったのはわかりますが、その分、きちんと男子生徒が『サポート』してくれたのでしょう?
ほら、ここにも、モップがけのときには、あなたの腰とモップの柄を男子生徒が持ってあげて、床掃除を『手伝って』あげたって書いてあるわよ。
それに、窓拭きも布巾代わりのエプロンを口に咥えさせてもらったのでしょう。
まあ、モップが股間に差し込まれたままというのの意味は、よくわかりませんが、大した問題ではないわ。
あら、椅子のバイブ掃除に、こんなに時間がかかっていたの?
男子生徒みんなが『手伝って』くれたのに、こんなに手間をかけて、一体どういうつもりなのかしら?
まあ、男子も掃除中、『多少の』おふざけがあったかもしれませんが、それを甘んじて受けるのも、反省中の生徒の役目です。
それどころか、反省中だからこそ、率先して男子生徒の要望に応えてあげるぐらいの気持ちを持ってもらいたいものだわ。
その上で、規律ある学園生活を送ってこその反省処分だというのに、掃除ひとつ満足にできないのではねぇ・・・。
そして、その掃除の後の校内巡回で問題を起こして反省期間の延長・・・・・・これのどこが反省なのかしら?」
玲子は厳しい視線を希に向けながら問いただす。
しかし、希はうつむいたまま、何も言い返すことができなかった。
無言の希の様子を見かねた様子で、玲子はさらに書類の続きに目を向けた。
「それから・・・、神崎寮長の報告書によると、反省室での食事は3日間とも朝食のみ摂取。
排泄は、反省室に入った日の夜に排尿1回、1日目は朝と夜にそれぞれ排尿が1回ずつと学校での排尿1回。
そして2日目は、朝と学校での排尿と、夕方にウンチのおもらしね。
3日目・・・きょうは、朝に水撒きで放尿、その後トイレで排便・・・と。
それにしても、中学生にもなってトイレ以外でお漏らしするなんて、反省以前の問題よ。
そして夜の奉仕活動は、初日が廃瓶回収で2日目がコンセントの通電検査、3日目が寮備品ボールの空気入れ。
どれも、時間内に完了していないわね」
そう言うと、玲子は手に取った報告書を机の上に置いて、希の方に目を向け、ため息をついた。
「私が寮長だったら、こんな内容では、とても反省完了の許可なんて出さないわよ。
これでよく『十分に反省した』なんて言えるわね。
神崎寮長も、随分と甘い評価を下したものだわ」
希は、表情を強ばらせた。
あれだけの恥辱を受けたにもかかわらず、玲子は、まだ足りないと言っているのである。
また、あの反省室に戻されると思うと、希の身体は、一瞬震えた。
「ですが・・・」
と、玲子は続けた。
「これ以上、まだ学園に不慣れな転入生の水野さんをひとりにしておくのも問題がありますし、水野さんからも、あなたの違反に対して許しを乞うお願いがありました。
あなた知っていて?
反省期間中は、あなたのバイブの操作権は男子生徒に貸し与えていたけど、きょうは、授業中にランダム起動するはずのあなたの椅子のバイブの動作タイミングは、全て水野さんの椅子のバイブ動作に置き換えられていたのよ。
つまり、水野さんの椅子のバイブは、あなたの分と自分の分を合わせて、普通の2倍の確率で動いていたの。
それが、あなたの罪を軽減するための条件だったのよ」
「え・・・ゆ、由紀ちゃんが・・・・・・そんなっ!」
希は、絶句していた。
「やっぱり知らなかったみたいね。
あの子も、自分に責任を感じていたのよ。
きのう、あなたの反省期間延長が決まった後、私のところに来て、あなたを許してほしいと頼んできたの。
それで、水野さんがあなたの分のバイブの動作を引き受けるという条件で、あなたの罪を軽減することを認めました。
あなたが、きょう解放されたのは、水野さんのおかげよ。
そうでなければ、たとえ理由があろうとも、この反省内容での解放は許可できるものではないわ。
これまでに4回も反省室に入っているのだから、あなたにもそれぐらいはわかるでしょう?」
「由紀ちゃん・・・」
小さな呟き声を漏らす。
「あの子・・・、転校してきて数日の彼女が、自ら自分の身を犠牲にしてでも申し出てきたのよ。
案外、強い子なのかもしれないわね。
本当は、水野さんからは、このことはあなたには言わないでほしいって頼まれていたのですけどね・・・・・・」
「・・・・・・」
うつむく希に向かって、玲子は口調を少し変えて、
「水野さんの努力に免じて、今回のあなたの反省は、これで終わりにします。
これに懲りたら、2度とこういうことのないように、心がけるのね」
と言った。
「・・・・・・は・・・い」
希は、うつむきながらも、ゆっくりと答えた。
「きょうは、もういいわ。
気をつけてお帰りなさい」
「はい」
希は、そう返事をするときびすを返して職員室を後にした。
反省期間の終了である。
希は、3日ぶりの寮の自室に、ようやく帰ることができたのだった。
寮に帰り、自分の部屋に戻ると、いきなり由紀が抱きついてきた。
目には涙を浮かべている。
希は、大丈夫、大丈夫だから・・・と、何度も由紀に言い聞かせながら、部屋の中へと入っていった。
そして、心の中で何度も何度も「ごめんね」とつぶやいていたのだった。