第84章


 職員室を後にした希は、学校を出て寮に帰っていく。
 希は、寮に着くと自分の部屋には向かわずに、ある部屋の方へと進んでいった。
 それは、女子寮の中のちょっと奥まったところに設けられている特別エリアにある。
 希が目的地に到着すると、そこには、寮長の神崎恵理子が待っていた。
 恵理子は、この寮の寮長であり、寮内の管理監督や生徒たちの健康管理、そして監視を任されている。
 希がやってくるのを見かけると、恵理子は希に声をかけた。

「希さん、玲子先生から聞いたわ。
 きょうから、2日間の反省室入りなんですってね。
 きょうが火曜日ですから、順当にいって木曜日の放課後までね」

「・・・・はい・・・」

「まったく、最近まじめにしているかと思っていたのに。
 また、男子生徒とやりあったんですって?
 女の子は、もっと慎ましくしていないとダメでしょ」

 恵理子は、ほんとうに困った子ね、という感じで希に語りかけると、

「それじゃあ、反省リストを見せて」

 と、希の方に手を差し出した。
 希は、うつむいたまま無言で玲子から受け取った反省リストを恵理子に渡す。
 恵理子は、反省リストに目を通してから、希に言った。

「ふーん、希さんも2年生になったのねぇ。
 やっぱり、1年生のころとは違うわね。
 とりあえず、内容はわかったわ。
 まあ、希さんも、このリストを見てわかっているとは思うけど、今回は今までのようにはいかないわよ。
 覚悟しておきなさいね。
 それじゃあ、まずは、この反省リストの内容にしたがって、反省室に入る前に、制服を脱いでちょうだい」

「・・・・・・・・・・・・・はい・・・」

 希は、その場で制服を脱いでいく。
 脱いだ制服は一枚ずつ恵理子が受け取り、靴下までも脱ぎ去って一糸纏わぬ全裸になった。

「この制服は、反省が終わるまで私が預かっておきます。
 反省が終わって、『衣類着用禁止』が解除されたら返却しますね」

「・・・はい・・・」

 恵理子は、希が脱いだ制服を脇にある棚の中にしまうと、その棚から別のものを取り出し、また希の方に振り向いた。

「次は、両手を後ろに回して」

 恵理子の指示に従い、希が両手を後ろに回す。
 すると、恵理子は希の肘を曲げさせ、両手で反対側の肘あたりを握らせる格好を取らせた。
 そうして、希の指先から肘までをすっぽりと覆う袋状になった拘束衣で両腕を封印して拘束する。
 その上で、拘束衣のワイヤーを絞って希の両腕の自由が完全になくなったところで、「カチッ」と鍵でロックしてしまった。
 これで、希は全裸の上に後ろ手拘束にされてしまい、剥き出しの身体を隠すことが一切できない状態になった。
 前かがみになり、両脚をくの字に寄せる格好をして、少しでも身体を隠す仕草を見せるが、形よく膨らんだ胸元も、叢に覆われた股間も、みんな丸見えとなっている。
 しかも、この拘束衣は、手錠などとは違い両腕の自由を奪うと同時に指先による一切の作業を不可能にしてしまうため、たとえ後ろ向きになったとしても手を使って何かをすることはできないのである。

「拘束衣も、反省期間が終わったら外してあげるわ。
 さぁ、反省室の中にお入りなさい」

 恵理子は、そう言いながら希の背中に手を添え、「反省室」とプレートのかかった部屋の中に促した。
 希は無言で反省室の中に入っていく。
 そして、希が部屋に入ったところで、入り口の扉が閉じられ、そして鍵がかけられた。
 約3m四方の正方形の狭い空間。
 これが、これから希が2日間を過ごす反省室であった。

 反省室は、入り口以外の3方の壁が、全て鏡で覆われている。
 この鏡は、当然寮のほかの鏡と同様、マジックミラーになっており、この鏡を通して男子棟の方から中が丸見えとなっていることは、希も知っていた。
 だが、何一つ衣類を身につけることもできず、それに加えて両手を後ろ手に拘束されている希には、たとえそのマジックミラーを通して自分の裸身姿が男子から見られているとしても、身体を隠すことはできない。
 見られる方向が1方向であれば、まだ隠しようもあるかもしれないが、3方から覗かれてしまうと、どう身を置いても身体を隠すことは不可能である。
 希は、2日間あらゆる角度から男子たちに視姦されるというこの状況に甘んじなければならないのだった。

 反省室の中には、小さな机とベッド、それに洋式便器があるだけである。
 それ以外のものは一切置かれていない。
 しかも、それらの家具は、机やベッドはおろか、トイレまでもが、マジックミラーの至近に設置されていた。
 そして、それらの家具は全て透明なガラスやアクリルで作られており、それら自体は身体を隠すのに何の役にもたたない。
 この部屋の中で生活をするというだけで、年頃の少女たちにとって、死ぬほど恥ずかしくそして屈辱的なものとなる。
 その部屋の中で何一つ身体を隠さない全裸姿で、そして両手を後ろに回した無防備な格好で生活しなければならないのである。
 それに加えて反省期間中は、対象者の反省を促すということで、その他さまざまな義務およびお仕置きが課せられることになっているのだった。
 
(この部屋・・・何ヶ月ぶりだろう・・・)

 希は、部屋の入り口のドアの前に座り込んでいた。
 3方をマジックミラーに囲まれたこの部屋の中に身を隠す場所はない。
 唯一、このドアの前が、どのミラーからも一番離れた場所なのである。
 以前、この部屋に入れられたときもこの場所に座り込むことが多かった。

(女の子を辱めるためだけに存在する部屋・・・わたしたちが罰を受ける部屋・・・わたしたちを辱めるための部屋・・・反省室・・・)

 希は、部屋に入ってしばらく呆然としながら思いを馳せていた。
 いや、これからの3日間を恐れていた。
 そして、今から数時間後に晒すことになるであろう、自らのみっともない痴態におびえていた。


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