羞恥と恥辱の掃除当番を終えた由紀は、どうにか寮の自室まで帰ってきた。
聖女学園に来てから2日目、それは1日目以上にきつく、そして恥ずかしい1日だった。
由紀は、部屋につくなり、制服も着替えないままにベッドの上に突っ伏し、そして枕に顔をうずめながら泣いた。
生まれてから、これほど恥ずかしい思いをしたことはなかった。
暖かい温室の中で純粋培養されたような由紀は、この学園に来るまで、世の中にこれほど恥ずかしい思いをすることがあるということすら知りもしなかった。
だが、それでも由紀はここで暮らす以外に行くところはない。
この学園が恥ずかしい思いをさせられる学園であるということも、正確には理解できなかったものの、知った上で納得し、そして入学した。
それでも、由紀は泣いていたのだった。
30分ほどもベッドの上で1人で泣いていただろうか。
ようやく気持ちを落ち着けた由紀は、ふと顔を上げ部屋を見回す。
だが、そこには、ルームメイトの希の姿はなかった。
「・・・・の・・・希ちゃん・・・?」
小さな声で名前を呼ぶが、返事は返ってこなかった。
由紀は、ベッドから起き上がり、マジックミラーの方を気にしながら私服に着替えて部屋を出ると、真由美と綾の部屋に向かった。
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「希ちゃんは・・・反省室にいると思う・・・」
由紀には、綾の言葉がよくわからなかった。
「反省室?」
由紀がその耳慣れない言葉を聞き返す。
その言葉に真由美が答えた。
「そう、反省室・・・わたしたち女子生徒が、学園の規則を破ったりしたときに、入れられる部屋のことよ。
・・・わたしも、何度か入れられたことがあるけど・・・あんな恥ずかしい思いは・・・もうしたくないわ・・・」
「そんなところに希ちゃんが!
わたしのせいで・・・」
「ううん、由紀ちゃんが悪いわけじゃないわ・・・この学校が普通じゃないだけ・・・」
綾は、由紀を慰めるようにそう言ったのだった。
その日・・・希は自室に帰ってくることはなかった。
しかし、まだ聖女学園のことがよくわからない由紀は、寮長の計らいで、希が反省室に入っている間、特別に瑞穂の部屋で過ごすこととなった。
「瑞穂ちゃん、よろしくお願いします」
由紀は、瑞穂の部屋のドアのところで律儀に礼をしてから部屋の中に入った。
「由紀さん、そんなにかしこまらないでください。
自分の部屋だと思って、くつろいで・・・といっても、この寮ではくつろぐことは無理かもしれませんね・・・」
瑞穂は、そう言って、ちらっと背後の鏡に視線を向けた。
瑞穂は、もう由紀よりも1年以上も長くこの聖女学園に在籍し、この寮にも住んでいる。
しかし、それでもいまだこの学園の淫ら極まりない仕掛けに慣れてはいないのだった。
それどころか、日々を重ねるうちに、さらに羞恥心が高まり、拒否反応が強くなっているほどである。
きょうも、放課後、寮にたどり着くまでの間に、耐えられないほどの羞恥を思い知らされたばかりなのである。
それでも、瑞穂はこの学園の先輩として、由紀を元気付けるように励ますのだった。
その日は、特別なこともない、ごく普通の夜だった。
しかし、それは聖女学園にとってという意味であり、少女たちにとって、特にまだこの寮に入って2日目の由紀にとっては、全てが特別であり、羞恥と恥辱の連続であった。
夕食のとき、希は食堂には現れなかった。
しかし、それは反省室に入っている間は普通のことであり、希が反省室に入っている間は、寮で希の姿を見かけることはほとんどないという。
仮に、希を見かけることがあったとしても、それは希が何か途方もなく恥ずかしい目にあっているときの姿だけであるということを、由紀はクラスメイトたちから聞くこととなった。
(ごめんなさい・・・希ちゃん・・・・・・・・私のために・・・)
由紀は、目の前にいない友人に、心の中で謝罪と、そして希の無事を祈るのだった。
そして、入浴の時間・・・由紀はきのうの出来事を思い出してしまった。
「わ・・・わたし、きょうはお風呂には入らない・・・・」
入浴の支度をしている瑞穂に由紀はそう告げた。
その言葉に、はっと振り返り、そして一瞬困った顔をした瑞穂は、由紀をさとすように言ったのだった。
「由紀さん、あのお風呂に入りたくないのは、よくわかりますわ・・・。
でも、この寮では、私たち女子は、特に体調などに問題がない限りは、毎日お風呂に入ることが義務付けられているんです。
お風呂に入らないためには、その理由を寮長に申し出て、『入浴免除許可証』をもらわなければなりませんわ」
「えっ!そんなのまであるの?!」
由紀は、その規則に心の底から驚いた。
「えぇ・・・しかも、その許可証をもらうためには、いろいろと・・・その・・・身体の検査を受けることになっていまして・・・その・・・あの・・・・・・・・・・それに、もしそれが仮病だったら・・・もっとひどいことを・・・・・・・」
瑞穂は、そこまで言うと、顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。
その姿を見た由紀は、その「許可証」なるものをもらうためにも、なにかよほど恥ずかしい目にあわなければならないということを知ったのだった。
そして、もしそれがうその申告だった場合には、さらに途方もないほどの仕打ちを受けることになる。
実際、これまでに何度かその「入浴免除許可証」をもらったことのある瑞穂は、寮の医務室で繰り広げられたその「検査」のことを思い出し、そしてかつて一度だけついた嘘の申告を見破られて、その身に受けた思い出したくないほどに恥ずかしい記憶に、顔を真っ赤にしてうつむいてしまったのである。
「うん、わかったわ、わたしもお風呂入る。
だから、そんな顔しないで・・・ね、いっしょにお風呂行こう」
由紀は、先ほどとは逆に瑞穂を元気づけるように明るく言って、瑞穂とともにお風呂へと行くことにした。
由紀は、きのうの反省を踏まえて、最小限のボディーソープだけを使って身体を洗い、そしてきれいに石鹸を洗い流した。
しかし、それは身体の全てを鏡に向かって、そしてその鏡の向こう側にいるであろう男子生徒に向かって、その姿を晒してしまうということである。
一生懸命、たった一枚だけ持ち込むことが許されたタオルと両手で身体を隠しながらの作業だったが、恥ずかしい部分の全てを隠し切ることができたかどうか、自分でも自信はなかった。
そして、身体を洗い終えると、一目散に浴槽に飛び込んだのだった。
お風呂から上がった由紀と瑞穂は、部屋でおしゃべりに花を咲かせた。
瑞穂が休日に趣味で焼いたというクッキーと紅茶で開いた、由紀の歓迎会、プチ・ティーパーティである。
そこで、由紀は瑞穂が週末の休みによくお菓子作りをしていること、そのお菓子を食べながらクラスメイトの女の子たちとおしゃべりをしていることとかを聞いた。
それは、ごくごく普通の中学生の女の子の楽しい生活を垣間見させるものであった。
それから、2人は学校の宿題や予習・復習をはじめた。
しばらく無言で勉強にいそしんでいた2人だったが、しばらくして由紀が、困ったような顔をしながらそわそわとしだした。
ふと、それに気がついた瑞穂は、そっと立ち上がり、
「由紀さん・・・・・あの・・・・・・行きたいのですね・・・・」
と、小声で声をかけたのだった。
「えっ・・・・あ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん・・・・」
2人は、意図的に目的語を避けて会話をしていたが、その意味するところは、正確にわかり合っていた。
「私も、そろそろ・・・・・・・・よろしければ、ごいっしょしませんか・・・・・?」
「・・・・うん・・・・・・・」
由紀と瑞穂はそう言って、2人で部屋を後にした。
そして、2人が向かった先は、数々の少女たちの羞恥の舞台となったトイレであった。
トイレに入ると、偶然にも中には綾と真由美の姿があった。
このとき、反省室に入っている希を除く、2年生の女子生徒全員が、このトイレに集結したのだった。
4人は、お互いに目を合わせ、それから、ゆっくりと目の前に広がる便座へと進んでいった。
そこにあるのは、この寮で暮らす少女たちにはいつもと同じの、そして普通のトイレでは考えられないような光景である。
広い空間に4つのガラス製の洋式便器が並んでいるだけで、それぞれを仕切る仕切りもなければ、ドアもない。
そして、その開放された空間を、より広く見せているのは、便器の向こうの壁一面に広がる鏡である。
この鏡が、その向こう側の空間、すなわち男子寮から見れば、ただのガラスに過ぎないことを、少女たちは皆知っている。
だが、この場所以外で自分たちの身体に駆け巡る生理現象を解消することはできないのである。
4つの便器の端から順番に、綾、真由美、瑞穂、由紀が近づき、ふたを開ける。
それから、4人の少女たちは、それぞれ便器に腰をかけていく。
綾と瑞穂が鏡に背を向ける向きに、そして真由美と由紀が鏡に向き合う向きに座った。
当然、そのときには、少女たちは、自分たちの下半身は剥き出しにしなければならない。
トイレで用を足す以上当たり前のことであるが、隣に同性とはいえクラスメイトがいる中、そしてこちらからはうかがい知ることはできないが、鏡越しに男子に覗かれているかもしれないという状況の中、下半身を晒すことに、少女たちの羞恥心は一気に爆発する。
しかし、少女たちの羞恥心はさらに高まっていく。
トイレですることは、ただひとつ。
少女たちが決して人には見せたくない行為であるのだから・・・。
4人の少女たちの剥き出しの股間から、4条の水流がほとばしった。
綾は、両手を口元でぎゅっと握り締めるようにしながら、饅頭のような割れ目から透明な清流を噴き出していく。
真由美は、うつむき屈辱に下唇をかみ締めながら、無毛の割れ目から黄色い流れをほとばしらせていく。
瑞穂は、両手で顔を覆いながら、繊毛漂う股間から、レモン色に輝く聖水を放流させていく。
由紀は、泣きそうな顔をして、両手で身体をかばうように抱きしめながら、飾り毛のない股間から、琥珀色の流水を垂れ流していく。
4人の放尿が終わったとき、全員が顔だけではなく肩まで真っ赤に染め上げていたのだった。
トイレから戻った由紀と瑞穂は、再び勉強机に向かったが、しばらくすると、2人とも少しずつ落ち着きがなくなっていった。
由紀は、身体の内側から湧き上がる不可思議な感覚に、心乱されていた。
(な・・・なに・・・この感覚・・・・・・・・なんか・・・・へん・・・・)
なんとなく椅子に腰掛ける腰が落ち着かなくなり、身体中がふつふつと沸き立ってくる。
一方、瑞穂も由紀と同様の感覚に悩まされていたが、こちらは、その理由に明確な心当たりがあった。
そう、これは寮内に漂う、催淫剤の効力が身体を蝕んできたときの反応であった。
この寮にきて2日目で、しかも、きのうはお風呂で催淫剤入りの石鹸をたっぷりと身体の敏感なところに染み込ませたことで、異常なまでの興奮状態に陥ってしまった由紀にとっては、この寮に漂う催淫剤により、少しずつ全身を敏感にされ疼かせてくる興奮作用は、はじめての体験であった。
次第に2人の吐息が荒くなっていく。
と、瑞穂が耳まで真っ赤に染めた顔を上げてると、
「あの・・・わたくし・・・・そろそろ、お休みいたしますわ・・・・」
と言って、ゆっくりと椅子から立ち上がった。
その声を聞いて瑞穂の方を見た由紀は、いまだ困惑の表情を浮かべている。
そして、その表情を見た瑞穂は、ふと気がついて由紀に声をかけた。
「あ・・・あの・・・由紀さん・・は・・・・・・、その・・・・・・あの・・・・・・・・・」
だが、たずねる言葉が思いつかない。
由紀も、ただ困惑した表情を浮かべて熱い吐息を漏らすだけで、言葉をつむぐことができない。
2人とも、共通の認識を持っているのだが、余りにも恥ずかしすぎて、それを口に出すことはできないのである。
その無言のやり取りを由紀が言葉でさえぎった。
「こ・・・この感覚が・・・・・・・・その・・・・なんか・・・・熱い・・・・」
由紀は、学校で何度か感じた催淫剤による身体の反応に戸惑う。
「たしか・・・由紀さんはきのうは希さんと・・・・」
顔を赤らめながら瑞穂が尋ねると、由紀はさらに顔を真っ赤に染め上げてうつむいてしまう。
「ベッドに・・・きょうはそろそろ休みましょう・・・」
瑞穂の提案に、由紀も無言でうなずき、自分にあてがわれたベッドの布団にもぐりこんだ。
「電気消しますね」
その瑞穂の言葉とともに、部屋の中から明かりが消える。
部屋の中は、天窓からうっすらと差し込んでくる星の光だけとなった。
こうして、少女たちの一日が終わる。
しかし、少女たちの夜はこれからが始まりでもあった。