第2章


 校門の中は、外とはまるで別世界だった。
 きれいに手入れされた芝生。
 その間を、わずかにうねりながら校舎へと続いていく、遊歩道のようなきれいな道。
 そして、大きくて立派な校舎。
 すべてが、調和のとれた絵画のようにきれいに配置されていた。
 いくら不安になっていても、そこは年頃の女の子である。
 きれいな風景を見て、由紀はちょっとだけ明るくなり、
(こんな学校なら、いいかな)
 と思いながら、校舎へと向かって歩いていった。
 

  玄関のところで、一人の女性が待っていた。
 年は20代前半だろう。髪を肩のあたりまで伸ばした、見た目はちょっと幼い感じがする女性だった。
 しかし、身体の方は、もう十分に大人であり、胸も腰も由紀とは比較にはならない。
 もっとも、まだまだ由紀は比較するほどのところまでもいっていないのだが・・・。
 その女性は紺のスーツに身を包み、いかにも清楚な雰囲気を振りまいて由紀が歩いてくるのを待っていた。

  その女性は由紀が目の前に来ると、少しかがんで目線を由紀の高さに合わせた。
 そんなちょっとしたしぐさが、由紀にはうれしい。
「おはよう、あなたが水野由紀ちゃんね」
「はい、きょう、こちらに転校してくることになりました水野由紀です。
 よろしくお願いします」
 由紀はなるべく元気そうに答えた。
「私は、紺野亜紀子。
 あなたのクラスの副担任よ。
 多分これから、いろいろなことがあると思うけど、がんばってね」
 亜紀子は、由紀の不安を察したのか、励ますようにそう言った。
  由紀は、学園での生活を考えて、ちょっと頬を赤くし、うつむきながら、
「はい」
 と消え入りそうな声で答えた。
「さあ、それじゃあ、職員室まで案内するわ。
 ついていらっしゃい。
 そうそう、あなたの制服も届いているわよ。
 職員室にあいさつしに行った後に着替えてちょうだいね」
 そう言って亜紀子は由紀の手を取って、校舎の中へと入っていった。

  由紀は、初めて見る学園の中を、目をパチパチさせながら亜紀子についていった。
  まだ、時間が早いせいか、生徒は一人も学校に来ていない。生徒は全員、敷地内の寮に住んでいるため、ゆっくりしていても、十分間に合うのである。由紀は、きょうが登校初日ということもあり、かなり早めに登校してきたのだった。
  学園の中は、どこもかしこも新品同様にきれいで、壁も床も、ぴかぴかに磨かれていた。ただ、ちょっと普通の学校と違うのは、廊下の壁や床、さらには天井にも、大小さまざまな鏡が埋め込まれていることだった。
 また、ほかにも不思議なものがあった。
 廊下には、2本の木製の棒が、レールのように設置されていたのである。
 その木の棒は、床に立てられた支柱によって持ち上げられ、ちょうど由紀の胸のあたりのところにあった。
 さらに奇妙なことに、その棒は1辺50cmぐらいの角が丸まった三角形をしており、頂点を上に向けて廊下の端から端までレールのように走っている。
 そして、ところどころに、数cmの凸凹があった。

  由紀は、さっぱりその器具の意味がわからず、亜紀子に聞いてみた。
「先生、この三角形の棒は何ですか?
 廊下じゅうに走っているみたいですけれども」
「ああ、これね。今にわかるわよ。
 わたしも、いっぱいこれのお世話になったわ」
 と、亜紀子は笑いながら答えたが、由紀には何のことやらさっぱりわからなかった。

 そうしているうちに、2人は職員室に着いた。亜紀子はドアを開け、
「どうぞ、お入りなさい」
 と由紀を招き入れた。
「失礼します」
 由紀は緊張しながら頭を下げ職員室の中に入っていった。

 亜紀子はまっすぐに1人の女性の方に向かって歩いていき、由紀もそれについていった。
「北島先生、この子がきょううちのクラスに転入することになった水野由紀さんです」
 北島と呼ばれた女性は、すっと、亜紀子の方を見て、すぐに由紀のほうに目を向けた。
(うわー、紺野先生もきれいだったけど、この先生も、すっごく美人!
 でも、ちょっと冷たそうな感じだなあ)
 由紀は1人そんなことを思っていたが、すぐに気を取り直して、
「あっ、きょうからこの学校に通うことになりました水野由紀です。
 よ、よろしくお願いします」
 とあわてて挨拶をした。

 確かに玲子は由紀が見とれるほどに美人だった。
 ちょっと幼い感じの残った亜紀子とは異なり、十分に大人の魅力を発散している。
 豊かなバストとくびれたウエスト、丸みを帯びた大きなヒップと三拍子そろった見事なプロポーションを鮮やかなスーツに包んでいる。
 髪はロングでストレート、確かに由紀の言うようにちょっと冷たい感じのする顔立ちだが美人であることには変わりない。
「わたしは北島玲子。あなたのクラスの担任よ。
 あなたかわいいから、すぐにこの学園に慣れると思うわ。
 がんばってね」
 玲子はそう言って、紙袋を由紀に渡した。
「あなたの制服よ。
 着方は紺野先生に教わってちょうだい」
 そう言うと玲子はまた、机に向かってなにやら仕事をはじめてしまった。
 亜紀子はそれを見て、
「さ、由紀ちゃん、新しい制服に着替えましょ。
 由紀ちゃんかわいいから、きっと制服も似合うと思うわ」
 と言いながら、由紀の手を取り、職員室を後にした。
 

 そして、2人はすぐ近くの「更衣室」と書かれたドアの中へと入っていった。
 しかし、その部屋は更衣室というには少々無理があるところだった。
 確かに、ロッカーやベンチが並んでおり、一見して着替えをするところだということはわかるのだが、今入ってきたドアは全面ガラス張りになっており、廊下から丸見えなのである。
 おまけに、ロッカーが置いてある以外の壁はほとんどが鏡になっており、ちょっと見ただけで、360度すべての方向から着替えを見ることができるようになっている。
 由紀は、驚いた顔をした後、顔を真っ赤に染めて、
「先生、本当にここで着替えるんですか?」
 と聞いてみた。
「そうよ。
 あ、そうそう、この学園の中では、女子は一切のプライバシーを持つことはできないの。
 確かに、はじめの内は恥ずかしいかもしれないけど、いずれ慣れてくるわ。
 それに、制服を着たら、もう、更衣室なんて必要ないと思っちゃうから」
 笑顔でそう言いながらも、亜紀子は気を遣ってくれたのか、由紀とガラスドアとの間に立ち、廊下から直接由紀が見えないようにしてくれた。
 もっとも、鏡越しには丸見えになってはいるのだが、幸いなことに廊下にはまだ人の気配はない。
「わ、わかりました」
 由紀も、この学園の趣旨を思い出し、真っ赤になってうつむきながら服を脱いでいった。
 学校まで着てきたワンピースを、ゆっくりとした動作で脱ぎ去り、下着姿となったところで、さっき受け取った制服を袋から取り出してみる。
 その制服を見た瞬間、由紀は思わず真っ赤になり、絶句した。

 それは、とても制服といえる代物ではなかったからである。
 基本的な形はセーラー服のようになっているが、紺の襟以外の部分は、真っ白なメッシュ地で、シースルーになっている。
 割と網の目が細かいために、はっきりと透けてしまうことはないが、見えそうで見えない感じが、いっそういやらしさをかもし出している。

  スカートもまた、異常を極めた。
 一見、普通の紺のミニスカートのように見えるが、その丈は、股下5cmといった超ミニサイズ。
 普通にはいて歩くだけでも、ショーツが見えてしまうであろう。
 さらに驚くべきことに、単なるひだと思われていた、部分が、前後2箇所ともにスリットになっているのである。
 つまり、前後の中央部分のもっとも女の子にとって隠しておきたい部分がスリットになっており、歩けばスリットが開き、その間から股間が見えてしまうことは必至である。
 あとは普通の黒のハイソックスが入っているだけだった。

(えーーっ、何なのこの制服!!
 こんなの着たら下着が丸見えになっちゃうじゃないの!!
 ホントにこんなの着るの・・・・?)
 由紀は顔を真っ赤に染め上げ、泣きそうになりながら亜紀子の方を見た。
 亜紀子はその様子を予想通りといった感じで見つめており、笑顔で、
「そう、それがこの学園の女子の制服なの。
 かわいいでしょう。その制服は女の子をよりかわいく、より美しく見せるために、工夫されたものなの。
 由紀ちゃんすっごくかわいいから、それを着たら、よりいっそうかわいく見えると思うな」
 と言った後にさらに驚愕すべき事実を告げた。
「それと、学校の中では、その制服と靴以外は一切身につけちゃだめよ。
 当然、下着も。
 ブラもショーツも、全部脱いでしまってね」

 由紀は目の前が真っ暗になったような気がした。
 ただでさえ、こんな恥ずかしい制服を着なければならないのに、下着の一枚すらも着けてはならないのである。
 こんなHな服装がほかにあるだろうか。
 しばらくの間、うつむいていた由紀は、観念したように
「はい」
 と小さな声で返事をした。
(そうだ、この学校はいやらしい学校なんだ。
 制服がいやらしいのだって当然じゃない。
 みんなおんなじ制服を着ているんだろうし・・・。
 仕方がないんだ。
 これを着なくちゃならないんだ・・・)

 心の中ではまだまだ多くの葛藤があったものの、最終的には従わざるを得ないということがわかっているので、無言のまま、下着を脱いでいった。
 もちろん恥ずかしくないわけではない。
 もう、顔は火が出そうなほど真っ赤になっていて、目にも涙を浮かべている。
 しかし、いつまでもここでぐずっていては、いずれ生徒たちが登校して、このガラスと鏡ばりの部屋を目にすることになるだろう。
 せめて、それまでに、制服を着ておかなくてはならなかった。
 

(い、いやだ・・・すっごくHな格好してる・・・・・)
 制服に着替え、鏡を見た由紀は改めて、その恥ずかしさ、破廉恥さに頬を染めた。

 セーラー服の襟以外の部分は白のメッシュになっているため、かすかに素肌の色が透けて見えている。
 それは、わずかに膨らみ始めた由紀のちいさな胸までも隠すことなく、うっすらと乳首の存在が見て取れた。
 とはいえ、完全に見えてしまっているわけではない。
 肌色にピンクの部分がうっすらと見える。そういう感じだった。

 下半身は、見た目は単なる超ミニスカートという感じになっているが、前と後ろの中央部は根元までスリットが入っていて、今はそれが重なり合ってひだのように見えているだけである。
 歩けばスリットが開き、紺のミニスカートの隙間から、何も隠すもののない少女の白い股間がまる見えとなってしまうだろう。
 しかも、スカートの生地は非常に薄い素材で作られているため、ちょっとした動きや風で、めくれあがってしまうことは疑いない。

 ちなみに、由紀はまだ恥毛が生えておらず、うっすらと産毛がある程度である。
 そのため、スカートの中ではかわいらしい割れ目がくっきりと見えてしまっている。
(はずかしい・・・。
 こんな格好で歩いたら・・・
 あ、あそこが丸見えになっちゃう。)
  由紀は恥ずかしそうに、一生懸命スカートのすそを押さえながら、亜紀子の方に向き直り、
「先生、着替えました。
 これでよろしいのでしょか?」
 と聞いてみた。
「うんうん、ぴったりよ。
 やっぱり思ったとおり、よく似合ってるわ」
 と、亜紀子は手をたたきながらうれしそうに誉めてくれた。
 

 その後、由紀は亜紀子に連れられて、また職員室に向かい、学園の教材を受け取ったり、理事長にあいさつをしたりとさまざまな手続きをしていた。
 その間も、由紀は慣れない制服を常に気にしていた。
 メッシュ地のセーラー服は、直接由紀の乳首に当たっており、動くたびに、ざらざらとした刺激を送りつづける。そのうち、乳首がわずかに硬くなり、とがってきて、さらに顔を赤くするのである。
 脚は内股になり、スカートのすそと、胸を押さえながら、もじもじと歩き回っていた。

 そのうち、学校にも、生徒が次々と登校してきて、廊下がだんだんと騒がしくなっていった。
 と、その雑音の中に混じって、何度か、女の子のくぐもった声や、荒い呼吸音が混じっていたが、由紀は職員室の中にいたために、廊下や、教室で何が起こっているのかさっぱりわからなかった。
 

 しばらくして、由紀のクラスの担任になるといっていた、北島玲子が亜紀子と由紀に向かって
「それじゃあ、そろそろホームルームに行ってくるわ。
 きょうは、朝礼があるから、そのときに紺野先生は水野さんを体育館まで、連れてきて。
 そこで、通過儀礼をするから。
 それまでは、廊下も普通に歩いていて構わないわ」
 と言って、職員室を後にした。

 由紀は、とりあえず、ホームルームの後の朝礼から参加すればいいということはわかったのだが、通過儀礼とか、廊下のこととか、よくわからないことが出てきて、ちょっと、困惑した顔になっていた。
 亜紀子に聞いても、
「すぐに、わかるわ」
 といって、はっきりと答えてくれなかった。
 由紀は少し不安になりながら、朝礼の時間を待っていた。


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