高き誇り



「藍沢さん……大丈夫……?」

 あたしは、小さな声で声をかけた。
 多分、声が震えていると思う……。

「……平気……」

 でも、藍沢さんはいつもと同じ、感情をあらわにしない表情で、一言だけ応えた。

 
 藍沢沙有希さん。
 あたしと同じ、この聖女学園の3年生だけど、彼女は2年の3学期に転入してきた。
 転入出っていうのは、うちの学園では珍しいけど、ないわけじゃない。
 でも、藍沢さんは、転入生の中でも……ううん、この学園の女子生徒の中でもかなり特異な存在だと思う。
 彼女は、このエッチで理不尽な決まりだらけの学園で、ひとり、その不条理な仕打ちに、真っ向から立ち向かっている。
 その一方で、1年からこの学園に通うあたしたちでも恥ずかしいような、学園が定める規則やルール、そしてもろもろの罰則とかには比較的従順に従う……。
 ただ、それを心から嫌悪しているような瞳の光は隠そうともしない。
 いつも、口数が少なくて……どちらかというと、あたしたちクラスメイトとも、あまり打ち解け合っているとは言えない……。
 でも……でも、藍沢さんだけこんな目にあうなんて……あたしのせいで……。

「藍沢さんだけ、こんな……ひどい……」

 あたしの口から、つぶやくような声が漏れた。


 藍沢さんは、今、両手両脚を三角形のフレームに縛られて、両手を頭の後ろでひとつにまとめら れて、両脚は磔台の根元にそれぞれ広げられてくくりつけられて……「人」の字の形に拘束されている。
 しかも、その状態で、よく伸びるゴムのような糸を……その……クリ…トリスに縛り付けられて……反対側の端を天井にくくりつけて、引っ張りあげられてい る。
 そのせいで、藍沢さんは、背を反らせて腰を前に突き出すみたいな格好にされて……女の子にとって、とっても恥ずかしくて辛い格好で拘束されている。
 だけど、藍沢さんはいつもと変わらない表情で、目の前に伸びる糸をじっと見つめたまま、黙って上を向いている。
 と、あたしが藍沢さんの姿を見ていると、静かな声で藍沢さんが話し始めた。

「わたしは、本意ではないけど、自ら納得してこの学園に来たの。
 あなたたちみたいに、あやふやな気持ちで来たのでも、この学園がどんなところか知らずに来たわけでもないわ。
 わたしは、ここに来るときから、この学園がどんなところか、そしてここに来れば、自分がどんな目にあわされるのか、すべてを知って、そして納得して入学 したの。
 もっとも、それ以外の選択肢なんかなかったけどね」

 藍沢さんは、静かだけど、ちょっと自嘲気味に言い放ったわ。

「理不尽な言い分には反論もするし、抵抗もするわ。
 でも、それだけ。
 学園の決めたルールには従うし、罰則も受ける、それが学園の決まりごとならばね。
 ただ、唯々諾々と、理不尽なことに従うのが、気に入らないだけよ」


「あらあら、随分と立派な心がけね」

 藍沢さんが、あたしに向かって話しているところで、後ろから聞き覚えのある声が聞こえたの。
 あたしは、その声を聞いた瞬間、びくっとして身体を強ばらせてしまったわ。
 でも、藍沢さんは、視線だけでその声の主を見据えている。
 あたしには、絶対に真似できない……。
 あたしたちに……ううん、藍沢さんに声をかけたのは、御影諒子先生。
 あたしたち3年生のクラスの担任なんだけど、あたしたち女子は、諒子先生の声を聞いただけで、身体が強ばっちゃうぐらい、苦手な先生。
 多分、諒子先生の声を聞いて平然としていられるのは、藍沢さんくらい……。

「全裸で磔にされて、クリトリスを吊られて、性器の割れ目をそんなに突き出しているのに、それだけ冷静でいられるなんて、なかなか見上げたものよ。
 それとも、よほどの恥知らずなのかしら……ね」

 諒子先生の、まるで挑発するみたいな言葉に、藍沢さんは、視線も反らさずに完全に無視している。
 す……すごい……。
 あたしだったら、きっと泣き出しちゃう。
 現に、今、あたしは震えが止まらない。

「相変わらず、生意気な態度ね。
 あなた、きょうは、男子生徒の所有物を破損したそうね。
 それどころか……」

 諒子先生がそこまで言ったところで、あたしは、思わず口を開いちゃった。

「あのっ、あれは、あたしがその男子のラジコンで、スカートとかをめくられたり、破られたりして……、沙有希ちゃんは、あたしを助けるために……」

「理由は関係ないの!」

 あたしの言葉を遮るように、諒子先生の厳しい声が降り注いだわ。

「桂木美玖さん、あなたも、もう3年生でしょ。
 いいかげん、この学園のルールに慣れなさい」

「は……はい………」

 この学園のルールに慣れるなんて……絶対に無理……。
 あたしが、諒子先生に叱られていると、それまで、無言だった藍沢さんが、小さな声でつぶやいたの。

「あの男子が、最低なことをしていたから、それをちょっと教えてあげただけよ」

 その声は、独り言にしては大きくて、あたしにも、そして多分、諒子先生にもはっきりと聞こえたと思う。
 と、諒子先生は、楽しそうに笑みを浮かべて、藍沢さんを見つめたの。
 あたしの身体、怖くなって震えてる……。

「そんな格好で、随分と強気な態度ね。
 そのお高くとまった態度、いつまでもつのかしら?」

「先生ほど、お高くなったつもりはないわ」
 
 藍沢さんが、そう応えると、諒子先生は目を細めて、藍沢さんの剥き出しになっている股間を見つめている……。

「口が減らないわね。
 でも、時と状況を考えてものを言った方がいいわよ。
 この状況……、どうにかなるとでも思っているの?
 いくら澄ました顔していても、あなたの弱点は、すべて知っているのですからね」

 諒子先生はそう言うと、剥き出しになって、大きく前に突き出されている藍沢さんの股間に指を伸ばしていく。
 だめ……そんなの……。
 でも、あたしには何もできない……。
 諒子先生は……親指と中指とで藍沢さんの……その……割れ目を開くと、人差し指を、その開いた割れ目に沿って滑らせている。
 そ……そんな……藍沢さんは今、両手両脚を拘束されて、動けないのに……。
 でも、諒子先生はそんなことお構いなしに、人差し指を上から……その……糸に縛られているクリトリスをなでて、そしてその下の……おしっこの穴のところ で、動きを止めたの……。
 そして……あっ……指先の爪で……その……お……おしっこの穴のところをくすぐりだした!

「……っ……」

 藍沢さんの唇が、かすかに震えた……ように思う。
 諒子先生も、それに気づいたみたい。

「ほらほら、あなたはここをこすられると、我慢ができないんでしょ。
 いつもお澄ましのあなたでも、ここをいじると、これまで何回も泣いてきたわよね。
 きょうは、どんなふうに鳴いてくれるのかしら?」

「…………ぅ…………」

 藍沢さんの腰が、かすかに震えている……。
 でも、藍沢さん、表情を固く絞ったまま、無表情を貫いている。
 そんな藍沢さんの反応を無視するみたいに、諒子先生は……あっ……そ、そんなっ!
 諒子先生……先生は……藍沢さんのクリトリスと天井との間にピンと張られた糸を……左手の指先でパチンって、弾いたの!
 ひ……ひどいよ……そんなの…………。
 糸の振動が、藍沢さんの……敏感なところに伝わって………。
 あんなの……耐えられるわけない……。
 あたしも、これまで何度も……その……ク…クリトリスを糸で引っ張られたことはあるけど……あれは、絶対に耐えられない………女の子だったら……絶対 に……。
 それでも、諒子先生は容赦なく藍沢さんのその部分を執拗に責めている……。

「あなた、尿道とクリトリスがことのほか弱かったわよね。
 そんなあなたが、いつまで耐えられるのかしら?
 いいかげん、学園にたて突いても無駄だっていうことがわからないの?」

「……………………」

「それに、そんな大人びた態度とっているけど、随分子供っぽいスタイルね。
 胸の膨らみもほとんどないし……3年生にもなって、まだ毛も生えていないの?
 まったく、こんなお子様みたいなスタイルで、大人ぶった態度とったって、滑稽なだけよ」

 諒子先生……ひどい……。
 藍沢さんは、無視しているみたいだけど……女の子だもん、自分の身体のことが気にならないわけない……。

「あら、濡れてきたわよ。
 どんなに強がったところで、感じているのねぇ」

「ふんっ……、だれだって性器を刺激すれば濡れます。
 粘膜を守るための自衛反応ですから。
 そんなことも知らないのですか?」

 あ……藍沢さんっ!
 そ、そんな言い方したら……。
 あたしが、諒子先生の方を見たら……、りょ……諒子先生……目を細めて……笑ってる……。
 だめっ……このままじゃ、藍沢さんが……藍沢さんが……。
 あたしが、何とかしなきゃ……って思っているときには、既に諒子先生が動いていた。

「藍沢沙有希さん、これは、あくまで自己防衛反応というわけね。
 でしたら、しっかりと身を守ってもらいましょう。
 脱水症状にならないように気をつけなさい」

 諒子先生はそう言ったかと思うと、ポケットからチューブを取り出して中身を搾り出して、その軟膏を藍沢さんの股間に塗りつけたの!
 あ……あれは、先生方が持っている即効性の強力媚薬!
 あれを塗られたら、1分もしないうちに、我慢できなくなっちゃう。

「藍沢さん、謝って。
 謝って許してもらおう!」

 あたしは、今にも泣き出しそうな顔で、思わず藍沢さんに向かって叫んだの。

「そうね、謝って、今までの暴言を悔い改めるなら、許してあげるわよ」

 諒子先生は、そう言いながら、まだ指で薬を塗りまわしている。
 あぁ……あんな中の方にまで擦り込むように……そんなにしたら……。

「藍沢さん!」

「どうするの、沙有希さん?」

 あたしと諒子先生の呼びかけに、藍沢さんは……、

「わたし……謝らなければならないようなことはしていません」

 って……そ、そんな……もう絶望的だわ。

「わかりました。
 では、私も教育的指導を続けます」

「……これが、教育的指導……なんですか……」

 藍沢さんが低い声でつぶやく。

「えぇ、そうよ。
 これがこの聖女学園での正しい生徒指導の方法よ。
 知らなかったのかしら?
 生徒手帳にも書いてあるのよ」

 諒子先生が、藍沢さんを見下して笑っている。
 そんな……、こんなことが生徒手帳に書いてあるなんて、ウソだ!
 でも……、

「……わかり…ました。
 ………ぅ……な、なら従います……」

 藍沢さんは、そう言ってうつむいて口を閉ざしたの。
 でも、あたしの目には藍沢さんの身体がほんの少しだけ、小刻みに震え始めたのが見える……。
 ううん、あたしだけじゃない。
 諒子先生にだって、見えているはずだ!

「そうね、従いなさい。
 学園の決めたルールには従うし、罰則も受けるんでしょう。
 それが学園の決まりごとならば……ね。
 あなたが、自分で言ったことよ」

「……え…えぇ………そう…ね……」

 藍沢さんは、それっきり何も言わずに、ただアソコの疼きに耐えている……。
 それに対して諒子先生は、藍沢さんの前を行ったり来たり、歩き回りながら、

「ふふふ……、あなたのその生意気な態度、たっぷりと矯正してあげるわ。
 言っておきますけど、もう泣いて許しを請いても手遅れですからね。
 あなたが逝き疲れて、糞尿を垂れ流しながらアヘ顔をみっともなく晒すまで、徹底的に責め立ててあげるわ。
 せいぜい、情けない姿を晒すまでの時間が少しでも長くなるように、頑張りなさい」

 と言い放った……。
 あたし……、信じられない思いでその様子を見ていたの。
 そのとき、藍沢さんのアソコから……、滴がひとすじ、床に落ちていったのが見えたわ。
 まるで、藍沢さんの涙のように…………。

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