ノーパン下校


 キーンコーンカーンコーン…

 チャイムとともにガヤガヤとにぎやかになる校舎。
 ここは某所の一般的な高校。
 今はちょうど午後の最後の授業を終えて各々の生徒が下校を始める。
 一部の者は部活、一部の者は友達との遊ぶ約束を、また一部の人間は特に何もなく、うちへ帰ろうとしていた。

 しかしそのなかに一部……ごく一部……ただ一人の生徒は別の目的を遂行しようとしていた。
 授業を終えて、はぁと息をつく一人の女子生徒。
 そこに友人がやってくる。

「やっほー、美菜子<みなこ>♪
 ちょっと喫茶店いかない?
 今日から割引日なんだっ」
「ほんと!?
 でもごめんあっちゃん、今日はちょっと用事があって……」
「あららぁ残念……」

 あっちゃーという感じで額から目にかけて手を当てて天井を向く友人。
 いちいちオーバーリアクションだが、そこが彼女のいいところでもある。

「明日でもいいかな?」
「あーうんいいよ。
 明日は用事ないの?」
「うん、今日だけだからね」
「ほんじゃ決まり!
 じゃぁ今日は帰って課題やるわ〜」
「ごめんね、バイバーイ」

 元気に走っていく友人『あっちゃん』を見送る美菜子。

「……(『用事』……か……)」

 友人が見えなくなったあと、うつむく美菜子。
 少し顔を赤くしている様子で立ち上がる。


 彼女の名前は『一乗寺<いちじょうじ> 美菜子<みなこ>』
 成績優秀容姿端麗、運動はあっちゃんにはるかに劣るもののそれでもクラス平均よりは上である(ちなみにあっちゃんは元気の良さからわかるように運動神経抜群のおてんば娘)。
 透き通るようななめらかで艶やかなロングヘヤーに、ちょこんとまとめたサイドテール。
 元気の良さと健康さと優しさを備えた彼女は、クラスの男子からもひそかに人気があるとかないとか。

「(なんだか緊張してきたなぁ……)」

 ゆっくりゆっくりと廊下を歩いていく美菜子。
 その立ち振る舞いには内側からにじみ出る清楚感や育ちの良さ(マナーなど)がうかがい知れる。
 学校の制服をきっちり着こなし、短いスカートとニーソックス(+絶対領域)が織りなす健康的な色気も兼ね備えて廊下を進む。


 トイレに入って個室に入り、後ろ手に鍵を閉める。
 ドアにもたれかかるように立って、深呼吸をする。

「ほんとうにやっちゃうんだ……」

 ほほを赤く染めた顔でバクンバクンと早鳴る心臓を落ち着かそうとするがうまくいかない。
 その鼓動は緊張を大いに含んでいるが、その中にかすかに……

「私……期待しちゃってる……?」

 胸に手を当ててハッとする彼女。
 今から自分がしようとしていることを再認識するたびに顔が真っ赤に燃え上がる。

「(………でも今日ぐらいしかないし……)」

 唇をかみしめ、意を決したようにうんっと頷く。

 彼女は短いスカートに両側から手を入れ、そっと降ろす……それに合わせてニーソックスで着飾った彼女のすらりとした脚を白い布が走る。
 足を交互にあげ、その布を脱ぎきる。
 その手にあるのは今まで彼女が穿いていた純白の下着だった。

「(うわぁ……スースーする……)」

 慣れない感覚に思わずスカートを押えてしまう。


 彼女は表向きは本当に優秀な生徒で、清楚、さわやか、優しい女の子だが、実は人に言えない秘密があった。
 彼女は実は性というものに興味があった。
 自慰をすることもあったが、次第に露出というものにも興味がわき始め、家にだれもいない日にノーパンになったりしていた。
 しかしついにはそれにも物足りなくなってしまい、外でのノーパンをしてみたくなった。
 初めは玄関から門のところまで歩く程度だったがそれも足りなくなり、もっと長い距離でしてみたくなったのでった。
 そうして学校で下着を脱いでノーパンで下校しようと考えたのだが、家にだれも居ずオナニーにふけることができる日ということで、その実行日が今日ということになった。


「(やっぱりはずかしい……)」

 いつもは元気のいい彼女も、恥ずかしさでしおらしくなってしまっている。
 もじもじと太ももを擦るたびに裾が揺れる短いスカート、その下には今、何も着けていないのだ。

「(やだ……いつもよりスカートが短く感じちゃう……)」

 『女子校生のスカートは短い』というのが認識としてあるような世の中。
 この学校の女子や美菜子も例外ではなく、ファッションだとかかわいく見えるとかいう理由で短いスカートをはいている。
 下着が見えたり風でスカートが捲れたりという心配はあるものの、『今』に比べれば下着が見えるなんて安いものだと思えてしまう(それでも恥ずかしいが)。

 今は何も着けていない。
 めくれてしまえば自分の恥ずかしいところが露わになってしまう。
 もし人前で風が吹いてめくれあがってしまおうものなら……

「(やだ……私、興奮しちゃってる……?)」

 恥ずかしいことになったときの心配をする彼女。
 でもそれは『心配』という言い訳をした妄想……いくら取り繕っても自分ではわかってしまっている。
 バクンバクンと心臓が鳴る音が自分の耳に聞こえてくるような気がした。
 スカートの下に直に空気を感じながら、その場で動けなくなる。

「(私、学校でパンティ脱いで……ノーパンになっちゃってるんだ………)」

 普段は家や人気のない真夜中にするくらいだが、今は学校、それもさっきまでクラスメイトたちが勉強していた学び舎。
 今だって部活をしている生徒や業務のために先生も残っている。
 人が多い状況で彼女はこんな恥ずかしい恰好をしてしまっているのだ。

「……早く帰らなきゃ……」

 恥ずかしそうにうつむいたまま呟く。
 そして手に持った下着に目をやる。

「(……今なら……今ならまだ戻れる、やめられる………ここで穿いて外に出たら、いつもみたいに安心して帰れる……)」

 顔を真っ赤にしながら葛藤する美菜子。
 自分の理性がけたたましく警告を発している。

「(……なんで迷ってるの私……この恥ずかしい状況で悩むことなんてないはずなのに…………)」

 自分に問いかける美菜子。
 ドクンドクンと胸が躍り、全身に血が流れる脈動を感じていた。
 そんな熱くなったからだを……空気が直接彼女のアソコを冷たくなぞる。

「……」

 彼女は下着を握りしめた。
 そしてそれを鞄の中に入れ、個室を後にした。


「(どうしよう……本当に出てきちゃった……)」

 トイレの手洗い場の鏡で自分の顔を覗き込む美菜子。
 吹奏楽の楽器の声が響く夕暮れの校舎、そのトイレの中に、自分の熱い吐息がこだまする。
 ここには美菜子しかいない。

「(本当に私、今穿いてないんだ……)」

 鏡に映る姿は少しほほを赤くして息が荒い自分。
 それ以外は何の変哲もない。
 制服を着て、髪を整え、サイドテールに束ねるためにお気に入りのリボンをして、ネクタイも歪んでない、きちんと整った紺のブレザー、そして赤いチェック柄のミニスカート……。
 一見すれば何も変わらない普段通りの姿、だけど……

「(私は今、エッチなかっこしちゃってるんだ………)」

 彼女は手洗い場から数歩下がって横に行く。
 ここのトイレには身なりを整えるための姿見が壁についている。
 その大きな鏡には、自分の普段と何ら変わりない姿が映る。
 美菜子はその鏡と向き合う。
 そして耳を澄ませて誰も来ないことを確認する。

 そろりと、おそるおそるスカートの裾をつかんでたくし上げる。
 彼女の白く健康的できれいな太ももがどんどん露わになっていきそして……

「(ぁぅ……見えちゃってるぅっ……)」

 美菜子の前にある大きな鏡に映るのは……
 整った制服に身を包み、いつもと変わらぬ服装の自分……しかしその姿はあろうことかスカートをめくりあげ、その内側に下着を着けず、恥ずかしいところをさらけ出している。

「(やだぁっ恥ずかしい……)」

 あられもない自分の姿を見て更に鼓動が早くなる。
 誰もいない静まり返ったトイレに熱い吐息がこだまする。

「でさー、メトロノームの調子がそれから悪くなってさぁ」
「!?」

 ふとすぐ近くまで声が来ていることに気付いた美菜子。
 あわててスカートの裾をおろす。
 離してすぐにトイレの中に二人の女子生徒が入ってくる。
 話の内容からどうやら吹奏楽部らしい。
 二人はめいめい個室に入り、扉と鍵を閉める。
 そして衣服の擦れる音が聞こえる。

「(あぶなかったぁ……もう少し気づくのが遅かったら……)」

 気づかなかった、夢中になりすぎて、しかもその内容がエッチなこと……。
 彼女の頭の中に今の状況が何度もフラッシュバックすると同時に言いようのない期待が炎のように燃え上がる。
 心臓はまるで100メートルを全力疾走で駆け抜けたかのように早く大きく動く。

「(こんなに危ない状況なのに、私……)」

――興奮している――

 ぞくぞくっと背中に背徳感の震えを覚えると同時に、彼女は太ももに一滴の冷たい蜜の感覚を感じたのだった。


「ジュウバンノリバマモナクデンシャハッシャシヤス。ダァシェリァス、ゴチュウウィクデセイ」

 雑踏の中響く駅員の崩れた放送。
 ドアの閉まる音ののち、向かいのホームの電車が走る。
 黄色い三角印の列の一番前に美菜子はいた。
 心なしか彼女の顔は少し赤い。

「(結局穿かないまま学校出てきちゃった……)」

 小さく身じろぎをしながら、スカートの中に心細い涼しさを感じる。
 駅の中は人がたくさん。話し声や足音、駅の放送やエスカレーターの音が聞こえてくる。

「(うぅ……ばれてないかなぁ……本当はばれてたりして……)」

 普段と変わらない日常、その中にいる女子校生。
 しかし彼女は下着を着けないでここにいる。
 そのたった一つの要因が、彼女の心を揺さぶっていた。
 新聞に目を向けながら時折顔を上げる中年サラリーマン、何かを話している他校の男子高校生、ひそひそ話をする年上の女性……
 そのすべてが彼女の淫らな秘密を知って嘲笑っているかのように思えてくる。

「(いやぁっ……恥ずかしいっ……恥ずかしいよぉっ……)」

 ぎゅぅっと肩が縮こまるような感覚になる美菜子。
 しかし彼女は嫌悪感や劣等感ではなく、下半身にじわりとイケナイ熱を感じていた。
 その熱は全身を駆け抜け、ほのかな火照りの快楽をもたらす。
 息が苦しい……バレないようにまるで息を殺すがごとく呼吸をする。

 ピンポンパンポーン

 そうしている間に彼女がいるホームにも構内放送が流される。
 電車進入の放送が流れ、電車が滑り込んでくる。
 彼女の前を先頭車両が通過した時だった。

 フワリ……

 風にスカートの裾がさらわれてなびく。

「あぁっだめぇっ!!」

 手に持っていたカバンを放し、スカートを押える美菜子。
 風に髪をなびかせながら必死にスカートの裾を押える。
 そうして勢いをなくした風は次第にいたずらをあきらめるかのようにそっと裾を元に戻す。

「(どうしよう、バレたかなぁ……見られた……!?)」

 顔を真っ赤にして固まる美菜子。
 怖くて周りを見ることもできない。
 後ろから聞こえる笑い声やざわめき、話し声……すべてが自分に浴びせられているような気がした。
 額に汗がにじむ。
 身体の中に突然サウナでもできたかのように熱を帯びる。

 そして目の前に来た電車の扉が開かれると同時に逃げるように電車に乗り込んだのだった。


 緊張が抜けない電車の中、人だかりの中をドア付近の取っ手をつかんで立つ美菜子。
 揺れる車両に揺られる身体。
 それを追うように短いスカートが小さく踊る。
 先の熱のせいなのか、彼女の秘所は淫らなしずくで濡れそぼっていた。
 その滴が空気にさらされ、奇妙な冷たさだけがスカートの内側に残る。

「(どうしよう……人いっぱいいちゃう……もしかしたら盗撮されたり……ううん、さっきめくれたのを見られたら、痴漢さんだって襲ってきちゃうかも……)」

 様々な不安が泉のように湧き上がる。
 しかしそれは不安と片づけるにはあまりにも期待と快楽に満ちていた。
 その泉の水を体現するかのように一筋の滴が太ももの内側を撫でる。

「(やだぁ、感じてなんかぁ……こんなのだめなのにぃ、イケナイコトしちゃってるのにぃ……)」

 ぐっと目を閉じて何度も自分に言い聞かせる。
 しかしその言葉を言い聞かせ、心の中でその声を聴くたびに、彼女は自分の愚かさと破廉恥さをかみしめるように実感していた。
 そうした罪悪感は彼女を追い詰めるどころか、背筋を撫でる極上の電流となって熱された体の中を駆け抜ける。
 そしてそんな快楽にじっとしているだけでは足りなくなったのか、時折太ももをこすり合わせてしまっていた。

「(早くおうちに帰りたい……)」

 ドキドキしながらそう願う彼女。
 しかしその眼は絶望ではなく、期待や甘えを宿していた。
 苦痛ではなく、やがて来る快楽への期待とも取れるその表情は、電車の中の日常に不相応なものだった。


 カランカラン……

 玄関のドアが開く音。
 彼女は自分の家に入り、扉と鍵を閉める。

「……ただいまー……」

 恐る恐る確かめるように声を出す。
 それに返事をするのは静寂。
 洗面所に行って手を洗いながら様子を見、そしてリビングへ。
 そこも静まり返っていた。

「……」

 誰もいない……。
 それを確かめるや否や彼女はリビングのソファーにどんっと腰をおろし、足を広げる。
 短いスカートでは隠しきれずそこには淫らに蜜を蓄えた彼女の花園があった。

「はぁっ……はぁっ……こんなになっちゃってる……」

 もう人目を気にしなくていい……火照った体をソファに預け、そっと指先を伸ばす。

「ひゃぁぁっん……」

 熱を帯びたワレメに指を添わせる。
 先ほど手を洗ったせいか冷たくなった指が彼女の官能を刺激する。
 ……否、いつも以上に感じる原因はそれだけではなかった。

「あぁっ……穿いて……なかったから……きもち……いぃ……んんっ……」

 指も腰も止まらない。
 今まで帯びた熱が快楽の波となって放出されていく。
 学校から家までの『ノーパン』が、彼女の自慰行為をより甘美なものにしていた。

――本当にしてしまった――
――エッチなことをした――

 学校の鏡に映った自分の恥ずかしい姿が何度も何度も頭の中を巡る。
 そしてそれが現実なのだということを、スカートの中に下着がない開放的な感覚が彼女に語る。

「あぁっだめっ……イき……そうっ……」

 彼女の濡れた指はいつしかクリトリスをなぞっていた。
 気持ち良くなるときはいつもここを弄る……だけど今日の感覚はいつも以上に甘く、美味。

「んくぅっ……だめっ……下着つけないで帰ってきて……それでオナニー……しちゃう……エッチな私には……んんっ……お仕置き……しなくっちゃぁっ……」

 快楽によがりながらどんどん絶頂に近づく。

「んんぁっ……す……ストップ……んっ……」

 快楽が上り上り今こここそ絶頂! ……という直前、彼女の指はピタリと止まる。

「んくぅんっ……」

 登り詰めようとした快感がぞくぞくと体の中に重くとどまる。
 求めていた快楽を直前で取り上げられ、体は物欲しそうに疼きつづける。

「はぁっ……んくぅっ……」

 露出だけでも感じていた背徳感、それを責めるように焦らして奪う絶頂……そんな自分へのお仕置きに彼女はたまらなくぞくぞくしていた。

「ぁう……イキたい……イキたいです……」

 絶頂を迎えることなく行き場を失った快楽が彼女の官能を煮詰めるように追い詰める。

「もう少し……もう少しだけ……オナニーをさせて……ください……」

 誰にあててでもなく口にする言葉。
 そうして再び彼女は秘所へと手を伸ばす。

「んっくぁぁぁっ」

 一度お預けを食らった秘所に再び触れられる指。
 そこから生まれる刺激が極上の快感となって彼女の中を駆け抜ける。

「ぁぁぁっやぁぁっ」

 夢中になって自慰にふける美菜子。ガクガクと震えながら快感を全身で受け止める。

「あぁっイクっ……いけないエッチな私だけど、許してぇっ、もうイカせてぇっ……」

 許しを請うように被虐の快楽を浴び、自らお仕置きを課した自分に媚びる。

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」

 ビクッビクッと身体を反応させながら絶頂を迎える。
 そすしてそのあとぐったりとする。

「……気持ち……よかった……」

 まどろみの中でひとり呟く美菜子。
 熱い溜息を……安心と快楽を楽しんだ余韻を含んだため息が部屋に響く。

「……またしちゃいそう……」

 恥ずかしくてエッチなことだったけど、もう一度やりたいな、と思ってしまう美菜子であった。



●あとがき●

 エロ画像検索で真っ先に『ノーパン』と打ってしまう男、『いふかひなきもの』こと『いふか』です。
 連載『バツゲーム!』の途中ですが、とある方の妄想を受信したのでそこから書き綴ってみました。

 今回のコンセプトは「自分でエッチなことをしちゃう女の子」でした。
 いろんな妄想をしながら楽しんじゃう、そんなソフトでまろやかなエロに仕上がっていたらうれしいです!



文章:いふかさん


戻る