かみおりの巫女


ざあぁ

 滝の飛沫に打たれながら、凍えきった身体に鞭打って、祝詞を唱え続ける。
 氷点下にありながら、けして凍らぬ霊山の滝は、僅かでも気を緩めれば命まで刈り取ってしまうだろう。
 神降りの儀――千年を超えて、この国を支えてきた儀式
 今年選ばれるのは私だろうと思っていた。だからこそ、失敗など絶対にできない。
 その想いが通じたのか

ふあ

「……あ」
 何か……大きくて、歪みのないものが、私の中に満ちた。
 滝の水が、身体に触れることなく弾かれる。指先から、髪の一筋にまで、ゆらり、と。
 神というものが何なのか、私は知らない。けれど、確かにこれは、そうとしか呼びようのないものだ。
「亜矢、見事に成し遂げたようだな」
「宮司さま……はい」
 滝壺の前に、いつの間にか。齢90を超えてなお矍鑠たる、私たちの束ね。
 でも宮司さまは、穏やかな微笑で私を押し止めて
「いや、礼を取らねばならぬのは、わしの方よ。今のそなたは、神降りの巫女なのだから」
 じわじわと、達成感と、喜びが湧き上がってくる。
「自分では分からぬかも知れんが、滝に打たれて3日。早く温まらねばな」
 手を差し伸べて、私を水の中から引き上げてくれる。嬉しいけれど、繋いだ手が、何だか恥ずかしかった。
 
 

「宴の準備はできておる。皆、今か今かと待ちわびていたのだ」
「それって、私が遅かったっていうことですか?」
「や、これはすまん。そんなことはないぞ」
 宮司さま相手に、冗談が言えるとは思わなかった。こんなに気さくな方だったなんて。
 く 手を引かれて……え? ここを曲がるの?
「あの、どちらへ? この先は……」
 女人禁制の奥の院。それに、今の時期は閉じられているのでは。
「亜矢は特別じゃよ。それに、元々奥の院は、神おりの儀のために設けられたものだからな」
「そうだったんですか」
 全然、知らなかった。去年もそうだったのかしら。
 そう言えば、去年選ばれた巫女って……あれ?
「どうした?」
「いえ、その……」
 おかしい。名前が思い出せない。確か、私にとても優しくしてくれて……長い黒髪の……顔も、思い出せない。
 足が遅くなりそうになっても、宮司さまにぐいぐいと引っ張られて。どうして、そんなに強く手を握るんだろう。
「……皆、亜矢のことを待っておる」
 逝きたくない と、そう思った……
 
 

 月の光りの中に、黒々と聳え立つ……これが、奥の院。
 何だか、とても重い。

ぎ いいい

 近づくと、両開きの板戸が重い軋みをあげながら……ジジ……灯りが点っているのに、どうして中がこんなに暗いんだろう。
 とん 軽く背中を突かれて、23歩、よろめくように。
「……う…あ」
 空気が、めちゃくちゃ重い……押し潰されそう。

ぎぃぃ……ばたん

 僅かに流れていた風が、閉ざされちゃった。へたり……立ってられなくて。どうして……何が起こってるの? 私はちゃんと神降りの儀を成し遂げたのに……

「それでは……これより神おりの儀を始めよう」

 ミシリ……右手の闇の中から、背の高い影。どういうこと? 逆らう間もなく両の手首と足首に、縄が掛けられていく。
「やめてくださいっ 離してっ!」
 だけど、ぐいっ……きゃぁっ! 振り解くより早く、左右から両手の縄が引き絞られた。
 がらがらと滑車の軋む音がして……いたっ……僅かに足が浮くくらいに吊り上げられる。
 そして、両足もまた……太腿に力を入れても……ぐい ぐいっ……やだぁっ!……引き伸ばされる。
「……ああ」
 どうして、こんなことをするんですか、宮司さま。
 目の前に、ぼうと浮かび上がる、能面みたいな表情をした宮司さまが。ひた……骨ばった指に頬を撫でられて、全身が粟立つ。
「……我が国には、元より神が居らぬ」
 搾り出すような声。それは知っています。だから私たちは、神を降ろして……
「違うのだ。それでは、神はただ通り過ぎてしまうのだ。我らの元には、留まって下さらぬのだ」
 ぐいっ……きゃぁっ! 巫女服の胸元を肌蹴られた。ぷるんと震えながら零れ出る乳房。さらに、引き千切るような勢いで、広げられた。
 はぁはぁ……じわり 汗が浮く。ゆらり……灯りが揺れながら、近づいて来る。みしり みしり……やだ、来ないで。
「ならば……閉じ込めればよい。巫女の身体ごと な」
 違う。全ては流れ行くもの……それは、禁呪。まさか、国の基となるここで、そんな禍事が……まさか
「……鈴菜さま…も」
「ほう? 思い出したか。あれもまた、神の檻となって、国を支えたぞ」
 それが、真の神檻の儀だと、宮司さまが哂う。
「これから、そなたの肉を檻と成す。そこから離れようなどと思えぬようになるまで……神が肉に溺れるまで」
 それは呪いだった……千年続いた妄執が、言霊となって私を縛る。むにゅ……後ろから回された太い腕が、私の胸を包む……宮司さまの言葉に合わせて、強く、弱く……
「……あ……あうっ……」
 べろり……前に跪いた誰かが、お腹に舌を這わせて……くぅっ!……おへそに舌を潜り込ませようと。
「……んっ!……くぅっ……だめ……」
 耳を塞ぐことができない……一方的に呪われて……はぁはぁ……ぬちゃぬちゅ……暑い……
 耳の穴にも……むぐっ……口も塞がれて……頬を押されて、口を閉じることができない……ぬちゅぐちゅ……ぐぅ……喉の、そんな奥まで、嘘……びちゃぬちゃ……舐め回されて……
 どろり……くぅっ!……なに気持ち悪いっ……服の上から、全身にどろりと生暖かい物が掛けられた……ぬちゃぬちゅ……にゅちゅ……何本もの手で擦り付けられて……ああっ……やだぁっ
「……うっ……ぐふぅっ!……ぶはぁっ!……ああっ!……ひあああぁぁっ!」
 ぎくんっ なにこれ熱いっ 苦しい。ぬちゅぐちゃぬちゅ……おっぱいもみくちゃにされて、ぢゅるるくちゅっかりっ……きゃうっ!……噛み潰されて……ああっ!
 びりり……袴が引き裂かれて……ぬちゅり……ふああぁっ!……擦り付けられた途端に、あそこがかっと熱くなって……あううっ ひぃっ!……腰が、勝手に がくがくと跳ねる。ぬちゃり……なのに、指が追いかけてくる。くはぁっ!……あぶっ……口に突きつけられた器 から 甘ったるいどろどろ……いやっ……頭を押さえられて、上を向かされて……んぶぅっ ぐふっ……んく……ぅ……
 息を止めようとし……むにゅ ぬちゃ……ひゃうっ! おっぱいを芯まで揉みくちゃ……あ……どろ……喉の奥に……
 ぐちゅり……ぬちゃちゅぶちゅ……ぐちゅ……私の身体が……ぬぷっ……やぁっ!……あっ!……ぬぷり……ひいぃぃっ!……
 
 

 霞む目……目の前に宮司さま……どうして裸……ぴと
「……っ!……な、何…………宮司さまっ! だめです 堪忍してくださいっ!」
 それだけはやだぁっ! だって、そんな……私の腕よりもおっきい……びくんびくんって……
 「……ぁ」
 めりっ……て……息が詰まった。ただ、涙が止まらなくて……べろり……宮司さまの舌に舐め取られた。
 ……逃げられないって 分かった
 少しでも身体を浮かせようとしてた腕から、力が抜けた。ずぶずぶ……ぎゃ あっ!……裂けちゃう でももう止まらない……ずぬっ……ぐはぁっ! 突き上げられた。ごりごきごきっ……骨盤が軋む……もう無理 なのに、両側から、腕に手が掛けられた……身体が、ほんの少し浮いて……一気に突き降ろされた――
 
 

「……ああぁぁ……ふわあぁぁ……」
 ぐちゅっぬちゅじゅぶっ……ぐちゅぬぶっ……
 まえと後ろから 交互に いっしょに突き上げられ て がくっ がくん
 どびゅっ びゅぐっびゅっ
「……あ……あふいぃ……」
 今度はお尻ぃ……ず…るる……じゅぼっ……抜け出した後、どぼどぼとお腹の中のがあふれだし……てるのに、いれちゃやだぁおなかいたいのぉ……めりぬぶぶぐぶぅっ
「……かはっ!……あがっ……ひっ……ああっ!」
 はじける あたまのなか ぐちゃっぐちゅっ……い……あ……あっ……ぬちゅぐちゅ……ああっ!……じゅぶっぐちゅぬぶぐちゅっ……ああああぁぁぁっ!!……
 
 

「……皆、ご苦労であった。この神檻なれば、この国の運気を大きく盛り上げてくれよう」
 おお と、疲労を感じさせつつも明るい声が起こる。
 いいな……みんなたのしそう……
「では、本尊に据えようぞ」
 ぐい 両腕をとられて、身体が浮き上がる。本尊?……あれかな? きらきらしてるの……きんいろの、大きな鶏さん。
 跨ぐように持ち上げられて……あ……鶏さんの背中に、大きなこぶが二つ 腕よりも太くって……びくん、びくんって。
 あれ? 向こうにも金色の像がある……大きな お猿さん……その前に蹲ってる人がいる……こっちに顔を向けて……誰だっけ 知ってる……ええと……鈴菜さまだ
 何だろう、鈴菜さまの口から、ずるって太い棒みたいなのが出たり引っ込んだりしてる。
 すぅ……ぴとっ
 ひゃうっ……お尻に、すごく硬くて熱いのがさわったっ……さっきのこぶ……めりみき……い……めきごきぶぢぶぢぃっ!……いぎゃあぁっ! いたいいたいっ! でも、声出なかった だって

 ごぎごりめき……ごぼぉっ

 おしりから口まで……串刺しにされちゃったから……
 ず……ずずっ……ずぶぶっ……ずごごごっ……うごぉっ!……体の中をぐちゃぐちゃにっ……死ぬ……
 あ……鈴菜さまと目が合った……教えてくれた……死ねないんだって。
 だって、私たちは……神さまの檻だから……これからずうっと……こうして……ここで……

 いつまで……も……
 
 

Fin
 
 


文章:Simonさん


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