催眠TV
〜プロローグ〜


「では、本番はじまりまーす!5秒前、4、3…。」
「みなさんこんばんは。
 『若者を斬る!』
 この番組を通して、現代の若者の実態を明らかにしていこうと思います」
 まじめそうなアナウンサーが物々しい雰囲気で司会を進めていく。
「ではさっそく、第1部を始めましょう。
 第1部を担当するのは○×市立S中○校の女子生徒189人です」
 その声に合わせ、学校指定のジャージ姿の女生徒がスタジオに登場してきた。
 少女たちはみな、司会の後ろにセットされている5段の壇に座っていく。
 全員が着席したのを確認すると、司会がこう言った。
「では、みなさん、準備をしてください」
 すると、少女たちはみな、上のジャージを脱ぎはじめた。
 ジャージズボンに体操服、それだけなら別段おかしいことはない。
 普通の教育番組のように見えるだろう。
 しかし、その様子は若干違っている。
 少女たちは、みな視線を落ち着きなくさせている。
 しかも、ほぼ例外なく猫背になっている。
 それに気づいたアナウンサーがひとりの少女に声をかけた。
「どうですか?
 緊張していますか?」
「は、…はい…」
 はにかみながら答えた。
 もちろん、目線はアナウンサーにもカメラにも向いていない。
「そうですか。
 では、みなさん緊張をほぐすために伸びをしましょう!」
 そう言うと、少女たちはみな、恥ずかしそうに顔をそむけながらも一斉に手を上げて伸びをした。
 猫背だった背筋が伸びるにつれ、体操服には少女特有の未発達なふくらみができていく。
 しかも、頂の先はほとんど例外なく、恥ずかしい突起が確認された。
 そう、今このスタジオにいるS中○校の女子生徒はみな、体操服の下には何も身につけていないのである。
 カメラは、その胸の先端を嘗め回すように映し出していく。
 少女たちも、それに気づいているのは間違いないのだが、だれも拒絶をしたりしない。
 明らかにこの会場の雰囲気は異様であった。

 実はこのTV局は、政府直属の極秘プロジェクトとして誕生した。
 有料チャンネルの中でも、一部のものしか知らない極秘チャンネルであり、その加入者の多くがいわゆる「VIP」と呼ばれる人たちである。
 このチャンネルでは24時間、アダルト番組を放送しているのだが、その出演者はみな一般人である。
 実は、このスタジオの存在する県の住民には、あらかじめ全員に催眠術がかけられているのだ。
 住民はみな、普通の生活を送っているのだが、製作する番組に適する女性が必要になると、その女性に暗示を与えスタジオに呼び出し、恥ずかしいことをさせるのである。
 そして撮影が終わると、その記憶を消して家に帰されるのである。
 しかも、住民には暗示をかけられているので、ときどき女性がいなくなることを不審に思う人もいない。
 つまり、裏では一般市民を使った極悪非道なアダルトチャンネルの撮影が行われていながら、誰もそのことに気づいてはいないのである。

 今回、VIPの要望にこのようなものがあった。
「普通の学生が、いやらしいことを当たり前にするのではなく、恥ずかしがりながらする姿が見たい」
 そこで今回、『若者を斬る!』という番組が制作された。
 よって、ここに集められた少女たちには、「スタッフにされた命令には絶対に従うこと」といういつもの暗示のほかに、「羞恥心は失わないように」、「この番組はこの国の国民全てが見ている」という暗示までかけられているのだ。

「では、S中○校、生徒会副会長の枡田彩子さん、スタートのあいさつを」
「はい!」
 そう呼ばれると彩子は立ち上がり、前に出てきた。
 今から自分がすることの恥ずかしさに、顔は硬直している。
 しかし、どんなに羞恥心を持っていても、催眠術に操られている彼女たちにとって「命令されたことは、当然のこと」と思っているため、進行が止まることも、泣き崩れる少女が出ることもない。
 彩子は涙目になりながらも、すらすらと口上を述べていく。
「みなさんこんばんは。
 S○学校で副会長をしている枡田彩子です。
 5夜連続で行なわれるこの『若者を斬る!』。
 その栄えある第1部は、私たちS中○校が選ばれました。
 私たちの担当するのは…」
 そう言うと、彩子は体操服のすそを持ってめくり上げた。
「『胸』です!
 みなさま、今夜は若者の胸について、いろいろ学んでください!」
 彩子は体を羞恥に震わせながらも、カメラをしっかりと見ながら宣言を終えた。
 「宣言中はカメラから目を離さない」よう暗示をかけられていたからである。
 カメラの前で自らの胸をさらすという、少女にとってはあまりにも恥ずかしすぎる行為に、彩子は全身を震わせている。
 しかし、暗示のせいで体操着を下ろすことも手で隠すこともできないでいた。
 その彩子のもとに司会者が近づいてきた。
「ありがとうございました。
 いやあ、それにしてもとても大きな胸をしていますね。
 先ほど制服でお会いしたときには全然そんな印象を受けなかったのに」
「え?! あ、はい…」
 これで自分の役目は終わると聞かされていただけに、予定外の司会者のコメントに彩子はおどろいてしまった。
 その表情には普段見せる利発なイメージは見られず、ただのか弱い乙女のものとなっていた。
 そこに助け舟としてカンペが示された。
 それを見て彩子は一瞬、びっくりしたが、すぐにそれを読み始めた。
「え、はい…。
 普段隠している部分だからそのようにみなさん誤解をなされると思うんです。
 ですから、きょう一日、わたしたちの胸についていろいろ知ってもらって、しっかりと理解をしていただけたらと思います」
 5部構成で行なわれる少女たちの羞恥いじめ。
 その第1回は『胸』。
 もっともらしい大義名分のもとに、胸いじめが始まろうとしている。


文章:帰ってきた暴走アフラマズダ十三世7(元は)さん
挿絵:いなつきほなみさん


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