Skinny-dip middle school
〜第3話 ファーストチルドレン〜


 1限の国語が終わると2限の体育のために直子たち1年の女生徒たちは更衣室に向かった。
 体育の授業は2クラス合同で行う。

「今日の体育ってなんだっけ」
「今週からバレーボールだよ。
 小運動場に集合だって」

 直子は更衣室のベンチに腰掛け、足をぷらぷらさせながら里美が着替えるのを待っていた。
 里美は身長160センチで、1年の女子の中ではもっとも背が高い。
 スカートを脱ぐと陸上部で鍛えた、しなやかな脚が現れた。

「小運動場じゃぁ、また日焼けしちゃうねー」
「靴下の跡がダサいよねぇ。
 ま、仕方ないけど」

 里美はふくらはぎのあたりまである靴下を少しめくって見せた。
 日焼けの跡の境界は曖昧で、長期間に渡って少しずつ日焼けしていったことを示している。
 ブラウスのボタンを外し、ブラを腕から抜き取る。
 小さなドット模様以外にはなにも飾りのない、シンプルなパンツを下ろすと、スリットに向かってまだ細い陰毛が流れを作っているのが見える。
 陰毛は恥丘全体を覆うほどには生えそろっていない。

「行こ。
 ボール準備しなきゃ」

 体育委員の里美は授業の準備をしなければならない。
 靴下だけの格好になった里美は髪をポニーテールにまとめなおしながら直子と2人で更衣室を後にした。
 下駄箱でスニーカーに履き替え、2人の全裸の少女が小運動場に向かって走り出す。

「今日、女子なにやるの?」
「バレーボールよ」

 後ろから追いついた男子が話しかけてきた。
 男子の格好は短パンに体操シャツ、いたって普通の格好だ。
 直子はその服装の違いに一瞬たじろいでしまう。
 横に里美がいなかったら無毛の股間と、膨らみ始めて間もない乳房を隠さずにはいられなかっただろう。
 しかし、里美の屈託のない姿を見ると、隠すことが恥ずかしいような気がしてくる。
 直子も里美の真似をするかのように男子生徒に笑顔を返した。

 話しかけてきた男子の後ろにもう一人男子生徒がいた。
 直子たちの視界に入らない近距離から、二人の躍動するヒップをじっくり鑑賞できる位置だった。

 なだらかな背中からゆっくりと視線を下ろしていく。
 まだ丸っぽさに欠ける直子と、陸上部で鍛えている里美。
 二人とも贅肉がなく、引き締まったお尻だった。
 直子は太ももが細く、はっきりとその境界が分かるが、里美はお尻から太ももへと、滑らかに続いている。
 太ももから降りていくと直子のやや細すぎるふくらはぎと里美のほどよくふくらんだふくらはぎ、そして唯一の着衣である白いソックスへと続いている。

 もう一度、今度は下から上へ視線を這わせる。
 スニーカー、ソックス、むき出しのお尻、裸の背中・・・。
 太陽の日差しがお尻の産毛を光らせている。
 歩を進めるたびに尻たぶが片方ずつきゅっと引き締まる。

「男子は今日なにやるの?」
「オレらは陸上。
 400メートル走があるんだよ。
 きっついよなぁ」
「中距離ってきついよね」

 押さえるもののない里美のCカップの胸は体の上下に合わせてぷるんぷるんと揺れていた。
 一方、直子のAカップにも足りない胸は乳首の揺れが体の揺れにわずかに遅れることでしか、その存在が分からない程度だ。

「じゃ、オレらは大運動場の方だから」
「うん、じゃあね」

 男子生徒たちは名残惜しそうな表情を読み取られないようにしながら、手を振って別れた。

「里美の陰毛、だいぶ揃ってきたよな」
「直子は全然だけどね」
「どっちが恥ずかしいものかな。
 生えてるのと生えてないの」
「生えてる・・というか生えかけの方が恥ずかしいような気はするけど・・・里美は直子と違って初等部からここだからな」
「そっか・・・そうだよな」

 里美たちが運動場の横にある体育倉庫からバレーボールのカゴを運びだした頃には、他の女子たちも全員運動場に集まっていた。

「はい整列!」

 体育教師青木久美の号令で、全裸の少女たちは4列に並んだ。
 まだ半数程度の少女の股間には毛がない。
 くっきりとしたスリットを誇示するかのように、みな両手を横につけて直立していた。
 全裸当番の直子にとって、女子生徒全員が全裸になる体育の授業は少しばかりほっとする時間だった。
 みんな裸であることに加え、男子の姿は遠くにしか見えない。

「今日は見学者はなし、ね。
 じゃあ体育委員、準備運動」

 この学校にも女子の体操服は存在する。
 しかし、1年生にとってはそれは生理中、体育の授業を見学するときの服装でしかない。

 全裸で出てくるなら更衣室は必要ないのでは、と思うかもしれない。
 だが、自分の下着を見られることと、さらにその下着を脱ぐところを見られるのは全裸を見られるのとはまた違った羞恥心をもたらす。
 この学校を創立した山枝剛三はそういった繊細な部分に非常に気を遣っていた。

 自分が世間的にとんでもないことをやろうとしていることは十分理解している。
 しかし、それをやり遂げるためには女生徒たちの協力がどうしても必要だ。
 それには力による屈服、恐怖による支配ではうまくいかない。

 人数が多すぎるのだ。

 社員数1万を超えるスーパーマーケットチェーンを切り盛りしていた剛三は数の力を熟知していた。
 押さえつけようとすればそれに対して負の力が働く。
 その負の力は一つ一つは容易につぶせる程度でしかないが、同じベクトルの力は瞬く間に合成され、巨大な力となる。

 押さえつけるのではなく、引っ張りあげようとする力を示すことによって、下の者のベクトルと方向を同じくすることができる。
 この力もまた、合成しあうのだ。
 下の者が他の者たちを牽引する力となる。
 女生徒の中から自ら全裸になることを望む者が出てくれば、その者の発言は上からの発言よりもずっと強大なものになる。

 剛三の計画は途中で変更を余儀なくされたものの、まずまずの成果を挙げていた。

 初等部が出来てから5年半、中等部が出来て2年半。
 計画書の中でファーストチルドレンと呼ばれている子供たち―それは当時6歳から9歳の23人だった―の選定は非常に慎重に行われた。
 最初のケースであることに加え、他の子供たちの牽引となることを義務づけられた子供たちは初等部でいわば幹部候補生としての教育を徹底的に叩き込まれた。
 道徳と称した授業が毎日組み込まれていたくらいである。

 そして、当初の予定にはなかった、中等部からの編入組―ディペンダントチルドレンと呼ばれた―にはファーストチルドレンとは異なった資質を持った―依存心が強い子供たちを選んだ。
 ディペンダントチルドレンたちは争いを好まず、影響力の強い者に感化されやすい。

 里美はファーストチルドレンであり、そして直子はディペンダントチルドレンだった。
「3年生はバスケか」

 他のチームが試合をしている間、直子と里美は体育館の方を見ていた。
 体育館の扉は大きく開かれており、そこから中の様子が見える。
 ちょうど、3年生の授業が行われていた。

「里美は背高いからなぁ。
 バスケも得意そう」
「背の高い女なんて可愛くないよ」
「そうかなぁ、かっこいいじゃん」

 3年も授業は男女別に行われていたが、この日はたまたま男女ともにバスケットボールだった。
 女子側の担当教官の申し出によって、後半20分、男女対抗の練習試合をやることになったのだ。

 体操服の男子と全裸の女子がセンターサークルでジャンプボールを競り合っている。
 3年ともなるとみな、陰毛が生えそろっている。
 コートの外に座っている女生徒は足を開いて体育座りしているものもいて、股間の黒い陰の中に薄紅色が見え隠れしている。

 そこにこぼれ球を拾おうとした男子生徒が勢い余って突っ込んだ。

「きゃーっ」
「おわっ」

「やだっ」
 直子は顔を赤らめた。
 男子生徒の顔は女生徒の股間にすっぽりとはまっていた。
 しかし、女生徒はM字開脚したまま男子生徒を指差して大笑いしていた。

「ぎゃははははーっ、康平、わざとだぁ!」
「馬鹿言え!
 なんでわざとそんなことするかい。
 っつーか、足閉じろよ」
「きゃははははーっ、やっぱ見てんじゃん!」
「見てんじゃねぇよ、見えてんだよ!」
「やーっぱ、康平ってスケベじゃん、ねぇ」
「スケベじゃねぇよ!
 見てみろよほら!」

 康平と言われた男子生徒は突然、自分の体操服を脱ぎだした。
 ソックスとシューズだけの姿になって女生徒の前に立つ。

「ほら見てみろ、全然ぴくりともしてねぇだろ」

 ぷらんとぶら下がったペニスを目の前に差し出された女生徒はにやにやして、ペニスと康平の顔を見比べる。

「ぴくりっていうかさー、ぷらんぷらんしてる」

 回りの女生徒まで一緒になって大笑いしている。

「康平!」

 そのとき、突然康平にパスが飛んできた。
 康平はそれを受け取るとドリブルでゴール下まで運び、全裸のまま軽やかにシュートを決めた。

「見た、今の?」
「ひぃ、ひぃ、苦しい〜。
 ぷらんぷらんがぶんぶんなってる」
「うるせぇ、俺の華麗なるシュートを見てなかったのか」
「だって、ひぃ、だって、ぶんぶんぶん回ってんだもん、おかし〜」

 体育教師の岩瀬清美が口をはさんだ。

「康平、あんたは脱がなくていい」
「なんでだよ、ガンちゃん。
 あれは小百合が・・・」
「誰がガンちゃんだ、誰が」

 岩瀬は康平の耳をつかむと扉のところまで引っ張っていった。

「いて、イテェよ。
 すいません、岩瀬センセイ、もういいません」
「遅いんだよ、もう。
 ほら、校庭3周、走ってきな」
「ちぇーっ」

 康平はぶつぶつ言いながら体育館を出ようとした。

「康平!その格好で走る気か?」
「えー、別にいいっしょ?」
「男の全裸にソックス姿はかっこ悪いぞ。
 それに体育館シューズで外に下りるなよ」

 体育館から再び爆笑。
 康平は乱暴にソックスとシューズを脱ぎ捨てると完全に全裸となって運動場に降りてきた。

(すごいなぁ、先輩たち。
 あたしもああなれるように頑張らなきゃ)
 直子は朝礼のときに羞恥に震えた自分を振り返った。
 なぜ裸を恥ずかしがらないようにならなければならないのか。
 直子の思考ではそこまではたどり着かない。
 そうあるべきなのだ、という盲目的な信奉だけが理由だった。

(でも、ちょっといいとこまで行ったよね、今日は。
 問題は・・・お尻の穴なんだよなぁ)

 コートを見ると、サーブを待ち構えている全裸の同級生たちがいた。
 いつでも全方向に動けるように足を大きく広げ、上体をかがめている。
 軽く開いたお尻の割れ目にすぼまったお尻の穴を見せているものもいた。

(うん、大丈夫。
 お尻の穴って、ただすぼまってるだけだもん)

 直子は自分のお尻を右手でつかみ、さりげなさを装いながらお尻を開くように引っ張った。
 直子自身すら見たことのない肛門を小運動場の片隅で曝け出す。

 肌を引っ張られて肛門がわずかに開いた。
 内側にふわっとした風を感じる。

(平気じゃん。
 全然平気。
 よぉし、今日は一日全裸で頑張るぞ!)

 そんな直子の思いを知ってか知らずか、里美が直子にこそっと耳打ちした。

「ぱちんぱちん」

 ふと目を上げると康平が走ってくるのが見えた。
 康平の股間でペニスは激しく上下に揺れ、腹と太ももにぱちんぱちんと音を立ててぶつかっている。
 直子と里美は肩を震わせて笑いを堪えていた。

「あー、笑ってんなぁ、おまえらぁ」

 康平がそれに気づいて直子たちに近づいてくる。

「い、いえ、笑ってません」

 うつむいたまま直子が答える。
 しかし、うつむいているとその視線の先には康平のペニスがある。

(ほんと、亀みたい・・・)

「いーや、笑ってたね」

 康平は直子たちの肩に腕をかけるとにやにやしながら二人の顔を交互に見た。
 康平が重心を傾けるたびにペニスが左右に揺れる。
 思わず直子は吹き出してしまった。

「ほら笑った」
「ぷはははっ、す、すいません、ひゃはは」
「おまえら、1年だろ?何組だ?」
「ひぃ、ひぃ、2組です」
「おーっ、2組かぁ。
 俺ぁ、今年の体育祭の赤団団長だからな。
 2人には応援団員を任命するからよろしくぅ」

「こらー、康平ー!
 さっさと走らんかーっ!」

 体育館から岩瀬の声が飛ぶ。
 康平は「へーい」と答えるとトラックに走り出して行った。
 よく焼けた肌に日焼けの跡は見られない。
 ぱちんぱちんという音は次第に小さくなっていった。

「今の人、生徒会長だよね」

 直子は里美を振り返った。

「うん、康平先輩。
 すっごく頼りになる人だよ」
「そっか、里美は初等部で知ってるんだ」

 集団の中にリーダーの資質を持つ人は5%だという。
 剛三がファーストチルドレンの数を20人程度にしたのはそのためだ。

 そして、ファーストチルドレンのリーダー、それこそが康平だった。


文章:めんたい60 さん


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