Skinny-dip middle school
〜第2話 天国と地獄〜
直子は全校朝礼が終わってもまだ、体に心地よいうずきを感じていた。
(あたしって、実は見られるの好きなのかなぁ)
見られてる、あたしだけ全裸、と思うと太もものあたりから性器のあたりにぞくぞくとした快感が伝わってくる。
(あたしだけ、全裸。
自然と笑みがこぼれてくる。
直子はぼぉっとしたまま、他の生徒たちと校舎に向かっていた。
(外で全裸なんだ、あたし。へへへ)
下駄箱で靴を脱ぐ。
「直子ぉ、後ろからお尻の穴見えちゃうよ」
友達に指摘されて一気に恥ずかしさが戻ってきた。
お尻の穴まで見えてたの?
性器を見られることも恥ずかしいことには違いないが、発育途上の直子の場合、見えるのはくっきりとしたスリットだけだ。
(あたしのお尻の穴を見た人って、「あそこからウンチが出てくるんだな」とか思ったりしたのかなぁ・・・いやぁっ)
自分の便と肛門、どちらを見られる方が嫌か、と訊くと処女は肛門と答え、非処女は便と答える傾向にあるという。
友達の手前、笑ってごまかしたものの、直子の心は一気に沈んでいた。
(あーあ、今日は6限までこの格好かぁ)
1日はまだ始まったばかりなのだ。
1年の教室は1階にある。
「でさぁ・・」
焦ったように会話に戻る男子生徒たち。
全裸当番は2週間に一度回ってくる。
直子は黒板を拭くために教壇に上がった。
(また見られてるんだ・・・)
小柄な直子には黒板の上端は高すぎた。
「おい、康夫ぉ、直子ちゃん手伝ってやれよ」
そのときちょうど教室に入ってきたもう一人の日直、康夫はそう声をかけられて「お、悪い悪い。あと俺やるから」と黒板に近寄った。
「あ、でもいいよ。もうすぐ終わるから」
詰襟姿の康夫は全裸の直子の隣に立つと、直子の持つ黒板消しに手を伸ばした。
「いいから貸してみ」
その弾みで片足立ちになっていた直子がバランスを崩して尻もちをついた。
「ごほっごほっ、ごめん」
黒板消しはちょうど直子の股間の上にあった。
「わ、あ、ご、ごめん」
慌てた康夫は黒板消しから手を離した。黒板消しは直子の無毛の股間に落ちた。
「やんっ」
直子は黒板消しを手にとり、立ち上がると顔を赤くして言った。
「戻さなくてもいいでしょ」
直子の乳房から股間、そして床についたお尻にまでチョークの粉がついていた。
「・・・」
なんとなく気まずい雰囲気に、康夫はさらに墓穴を掘った。
「今日はさ、シャワー浴びちゃえば簡単に落ちるじゃん・・・あ」
直子の尖らせた口に気づいた康夫はうろたえた。
(えーそうよ、どうせあたしは全裸よっ、シャワーで簡単に汚れを落とせる全裸よ、悪かったわね!)
だが、直子は教室を出た途端に後悔した。
(どうしてみんな廊下でたむろしてるのよぉ!)
1組の男子なんて、あたしのことほとんど知らないだろうなぁ。
直子はつかつかつかと早足で通り過ぎた。
「今の子、誰?」
この学校では女生徒の容姿―特に体つきや発育具合など―について話すのはタブーとされている。
シャワーを浴びた直子は教室に戻ると、バッグからタオルを取り出して椅子に敷いた。
2年は状況が少し異なる。
3年には夏の暑い日や雨の日に全裸で登校する生徒たちがいる。
たかが2週間に一度の全裸当番でここまで変化するのは信じられないかもしれない。
そして彼女たちが全裸になるのは全裸当番のときだけではないのだ。
頭の中で何度も反芻してみる。
ぜ・ん・ら。
すっぽんぽん。
靴下だけ履いて、お尻もワレメも見せてるの。
すごい。
すごいよね。
みんな制服着てるのに、あたしだけ全裸。
しかも見て。
隠そうとしてないんだよ。
まだお毛毛も生えてないあそこ丸出しで。
丸出し。
だって規則なんだもん。
あたしがしたくってしてるわけじゃないもん)
気持ちいい。
性器にふわりと当たる風。
見せるのが好きなのか、単に裸でいるのが好きなのかはわからない。
でも、ここでは裸になっていても「なぁにあの子」とか変な目で見られたりしない。
男の子も嫌らしい目で見たりなんかしない。
お父さんが言ってたように、規則じゃない日もほんとは全裸でいたいんだー、あたし。
でも、それはちょっと恥ずかしい。
自分から裸になりたがってる、て思われたらやっぱ、変態だと思われちゃうよね、きっと。
友達との会話も上の空で、頭の中では(見て見て見て見て)と繰り返していた。
腰に手をあて、その手を下に滑らせていく。
なにもひっかかるものがない全裸。
かすかに膨らんだ乳房の先の乳首の影がもう一方の乳房に落ちている。
後ろから誰か見ていることを期待しながら、わざとひざを伸ばしたまま靴紐をほどく。
「やだっ」
やだ、恥ずかしい・・・。
そこから顔を覗かせるほど小陰唇は発達していないし、そこを覆う陰毛もない。
その楚々とした風貌は性や排泄行為と結び付けにくいものだった。
しかし、お尻の穴は誰のものであってもそこから出てくるものは便に他ならない。
直子もその例に漏れず、お尻の穴を見られることには激しい抵抗があった。
下駄箱を上がり、突き当たり左手が1年2組の教室だ。
教室に入るとみんなが一斉に直子の方を向いた。
紺のブレザーと黒い詰襟の中、肌色の塊が視界に飛び込んでくると反射的に注意を向けてしまう。
「お、おう」
直子はさっきまでの「全裸大好き」状態で教室に戻れたらどれほど良かったことかとため息をついた。
直子にとって運が悪いことに、直子は日直であり、なおかつ、1年2組で唯一の全裸当番でもあった。
この中学校は完全週休2日制だ。
つまり、登校日10日に1回のペースということになる。
女子生徒の人数は全校で81人だから、平均1日8人の全裸当番がいる。
1学年2クラス、合計6クラスの学校であるため、1クラスあたりの全裸当番は1人ないし2人だ。
この当番表は担任教師によって毎月決められる。
生理日を避ける必要があるため、担任に生理日を報告しなければならない。
この学校の教師は校長である山枝剛三を除いてみな女性であるので、女生徒にとっては多少救われている。
この学校が開校した当初は1ヶ月に2日というノルマで生徒自身が決めることができたのだが、すべての女生徒が示し合わせて2日続けて全員で全裸当番をやるという事態になり、それから担任教師がうまくばらけるように指定するようになった。
また一瞬、教室のざわめきが消える。
片足でつま先立ちして必死に手を伸ばす。
先ほどの失態から、みんなにお尻を向けていることが怖かった。
直子のきゅっと上がったヒップは爪先立ちして肛門を隠すには心もとない。
肛門はかろうじて隠れているものの、ふっくらとした大陰唇は丸見えだった。
お尻に力を入れると尻たぶにえくぼができて可愛くないよなぁ、と思いながらも教室のざわめきが戻ったことにいくらか安堵していた。
男子生徒たちは会話をしながらも事あるごとに視線を泳がせた。
「きゃっ」
黒板消しは直子の上に落ち、もうもうとチョークの粉が舞った。
「ぷはっ、ううん、大丈夫」
康夫はその黒板消しに手を伸ばした。
黒板消しを取り上げると、その下からチョークの粉にまみれたスリットが現れた。
「あ、いや、その・・・ごめん」
「あーあ、チョークまみれ」
直子が自分の体から視線を戻すと、それにつられて直子の体を見ていた康夫がまた慌てて「ご、ごめん」と謝った。
「いや、その・・・と、とりあえずさ、チョーク落としてきなよ。あとやっとくから」
「うん・・・」
直子はそれ以上、康夫がなにかを言い出す前に、泣きたいような気分で教室を後にした。
1学年2クラスのこの学校では、2年や3年はクラスがシャッフルされてみな顔なじみとなっている。
しかし、1年の、しかも中学からの編入生である直子にとっては隣の1組の生徒―特に男子生徒は―知らない顔なのだ。
シャワーは更衣室にあるが、そこに行くためには1組の前を通らなければならない。
で、こんな格好で男子たちの間通っていくと絶対後で「今の裸の子、だれ?」とかいう話になるんだ。
名前も知らないけど裸は知ってるなんて、もー最低っ。
その迫力に1組の男子たちは道を開け、直子の可愛らしいお尻をぽかんと眺めていた。
「2組の子だろ。
今日、ラジオ体操やってた・・・」
「ああ、そっか・・・。
中学からの編入生か。
可愛いお尻だね」
「うん・・・いいねぇ」
もっとも、男子生徒同士でそういう会話をするなというのは無理な話だろう。
なんせ、常に視界のどこかには1人は全裸の少女がいるのだ。
このような状況を喜ばないわけはない。
しかし、それを女子に向かって口に出しても何もいいことはない、ということも十分理解していた。
みな、女子の裸体を強く意識していながら、それをさも大したことではないかのように振舞っていたのだ。
女子からの苦情によって、この制度がなくなってしまわないように・・・。
直子が席につくと、女の子たちが直子の周りに集まった。
少しでも男子生徒からの視線を妨げられるようにだ。
こうして女生徒の壁ができ、椅子に座っていることで直子は少し安心することができた。
これも1年生ならではの光景だ。
陰毛が生えてくる頃はもっとも恥ずかしがるが、生えそろってしまうと何人かの生徒は全裸になることを厭わなくなる。
もっとも、全裸当番でない日も全裸で登校する生徒はまずいない。
全裸であってもソックスは履かなければならないため、雨の日に靴下がびしょぬれになることを嫌って全裸に素足、サンダル履きでやってきて教室で体を拭いてソックスを履くのだ。
教室のロッカーに制服を置いておき、登校してから着るものもいる。
彼女たちが全裸になる理由は各学年ごとに異なっている。
文章:めんたい60 さん