「ストック・ヤードの紳士」


 深い地下の通路を抜けると高いビルに囲まれた薄暗い一角にその施設はあった。
 闇の世界では、"ストック・ヤード"と呼ばれる秘密の売買市場だ。
 今日、現れた紳士の名は、シークレット.K.ロック ここでは、仮にL氏としておくことにする。

 一見何気ないそのビルの受付に会員証を提示してゲートをくぐると恭しく受付嬢が応対した。
「これは、これは、L氏様いつもご利用ありがとうございます」
「本日は、どのようなチョイスをお望みでしょうか」
 L氏は、少しだけ羞恥かむようにして、書き込み済のオーダー・シートを差し出した。

   性別:女子 年齢:12〜15才 体型:標準又は痩せ型 フェイス:ロリ
   特筆条件:髪染め、刺青、刺貫の無いアジア系の美少女

 ふふんと鼻で笑うのを隠すように、受付嬢は丁寧におじぎをして答えた。
「まあ! 何と清烈なご注文でしょう」
「きっと、ご満足のお品がございますわ、ここには常時1200体のストックがございますもの」
 受付デスクの端末にオーダー・シートを読み込ませると3体のバーチャル標本が表示された。
「L氏様の条件だと、本日は3体御用意できますです。ハイ」
「最近の傾向で若年層にも刺青、刺貫が流行ってまして、ですからこれはお薦めです」

 ここのストック・ヤードは、特別のルートで仕入れた各種の女体を人工冬眠させて保管してあるのだ。
 もちろん、保管前の手入れも怠りはない、それは身体の手入れから記憶にまで及んでいた。
 つまり、ここでは、注文通りの女体が秘密裏に且つ安全に調達できるのだった。

「3体とも、頂くとしよう、支払いはカードでもよろしいかな?」
「ハイ、L氏様はいつも御利用のお得意様ですので、カードで結構でございます」
「それで、それで3体とも、記憶と傾向を従順・淫靡に調整いたしますか?」
 しばし考えながら、L氏はふと思いついたように答えた。
「うむ、2体はいつも通りの誂えで調整してくれ、もう1体は反抗・潔白で調整してくれないか」
「嫌がる少女が、潔白を汚される恐怖と抗いが楽しみを増すかも知れぬ…フフフ」

 1時間ほどロビーで時間をつぶすとさり気なくインフォメーションが告げた。
「L氏様、L氏様〜、商品の準備が整いました。カウンターまでお越しください」
 L氏がカウンターに行くと梱包を終えた商品がロボット・カートに乗せられていた。
「こちら、2体はミークネス従順モードで、こちらがレジスタント反抗モードでございます」
「L氏様、本日はご利用、誠にありがとうございました、またのご利用をお待ち申しております」
 引換えICチップを丁寧に受け取った係が、商品を搬送リムジンまで運んで深々と頭を下げている。

 帰りのリムジンの中で不気味だが少年のように童憧の表情でL氏の頬の皮がゆるんでいた。
 閑静な郊外の広い敷地の屋敷に戻ると妖しい目つきで梱包を解いた。
「君と君はこっちだね、それと君はこの入り口だよ」
「3人とも、あとで素敵な名前をつけてあげるからね」

 そのドール・ハウスの入り口には、"聖女学院"の看板が見える。
 L氏は、優しい猫撫で声でこう呟いた。
「みんな!、新しい転校生ですよ、仲良くして下さいね!!」


文章:めぐみ さん


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